姉「ちょっとぉっ、何よその反応は!」
弟「いや、怖くて……じゃなくて、キモくて……でもなくて、ええっと……」
姉「人がせっかくやってあげたのに……姉の気持ちを踏みにじる弟はねぇ、お仕置きよ!」
弟にスリーパーホールドをかける。
弟「ぎぎぎぎ……くるじぃっ……ギヴッ、ギヴッ……」
弟がバンバンとあたしの腕を叩いてきたので、解放してやる。
弟「この暴力姉ちゃんめ! だから僕は姉よりも妹が欲しかったんだぁーっ!」
弟が泣きながら逃走していく。
姉「あ、あー……またやっちゃった……」
昔はもっと仲良くできてたのに、何でこうなっちゃったんだろ。
しょんぼりとしながら朝食の用意をする。
姉「弟ー、朝ご飯のリクエストは何かある?」
弟「すき焼き」
姉「ブッ飛ばすわよ」
弟「ひぃっ! そ、そんなこと言うくらいなら聞かないでよ!」
姉「朝よっ? すき焼きはありえないでしょう、常識的に考えて!」
弟「まったく、姉ちゃんは冗談もわからない……ぶつぶつ……」
プチッと、あたしの中で何かがキレる音がした。
姉「ああ、すき焼きね! それじゃあ作ってやろうじゃないのよ!」
半ばヤケクソになりながらあたしは調理を開始した。
爽やかな朝の食卓。
その中央を、グツグツと煮立つすき焼き鍋が占領していた。
姉「どうすんのよ、これ……」
弟「食べるしかないよ、もう……」
朝からすき焼きなんてヘビーよね……弟に悪いことをしちゃったかも。
弟「うん、美味しいよ」
姉「えっ、ほ、ほんと?」
弟「姉ちゃんは暴力的なくせに家庭的で、料理が上手いんだよね」
姉「暴力的ってのは余計よ」
弟「ねえちゃんはすごいなあ、ぼくにはとてもできない」
姉「もうっ……何で棒読みなのよ……褒めるときくらい、普通に褒めてほしいわ」
弟「朝からすき焼きを食えるなんて、僕はとってもラッキーマンだね」
相変わらずよくわからないことを言う弟だけれど、
何はともあれ喜んでくれているようで良かった。
姉「って、あぁーっ! 悠長にすき焼き食べてる場合じゃないわ!」
弟「作るのに時間かけすぎて、遅刻確定だね」
姉「ばかっ、優等生のあたしが遅刻なんてできるわけないでしょ!」
弟「せっかくだからゆっくり食べていこうよ」
姉「もうっ、こいつはっ!」
洗面所まで走り、二人分の歯ブラシに歯磨き粉をつけ、急いで居間に戻る。
そして歯ブラシの片方を弟の口に無理矢理突っ込んだ。
弟「んぐぅっ」
姉「って、そっちはあたしの歯ブラシじゃない!」
慌てて弟の口から歯ブラシを引き抜く。
弟「ぷはぁっ、い、いきなり何す、んぐっ!」
姉「あんたはこっち!」
今度はきちんと弟の歯ブラシを、弟の口に突っ込んだ。
で、あたしはというと、どうしよう、これ。
姉(一回弟の口に入れちゃったけど……ええい、迷ってる時間はないのよ!)
意を決して歯ブラシを口に入れた。
姉(これって間接キス……いや、間接ディープキスなのかしら)
考えると、ドキドキしてくる。
もっとずっと磨いていたいけど、あまりゆっくりはしていられない。
マッハで歯磨きを終わらせ、ダッシュで玄関を出る。
弟「なんで僕までっ」
無論、弟の手はばっちり掴んでいた。
姉「後ろに乗りなさい」
弟にヘルメットを投げ渡し、バイクのエンジンをかける。
弟「バイク通学は校則違反じゃ……」
姉「遅刻するよりはマシ!」
弟「自称優等生が校則違反っていうのは……」
姉「ゴチャゴチャ言うと縛って引きずり回すわよ」
弟「ひぃぃっ! わかったよ、乗るよ!」
弟が後ろに乗り、腰を強く掴んでくる。
テンション上がってきた。
学校近くの駅の駐輪場にバイクを停める。
姉「よし、ここからなら歩いても大丈夫そうね」
弟「ヘルメットは?」
姉「ここに置いといて盗まれるのも嫌だし、かぶっていくわ」
弟「えぇぇぇっ」
弟が「こいつやべぇ」というような目を向けてくる。
姉「実は今週はヘルメット登校週間なのーとか笑顔で言えばみんな信じるわよ」
弟「信じないから。せめて手で持っていこうよ」
姉「そんなの、あたしたちバイク通学してまーすって言うようなもんじゃない」
弟「いや、かぶってるのだって十分……」
姉「何よ! 皮かぶってるくせに、ヘルメットかぶるのは嫌だっていうの!?」
弟「朝からそんな超下ネタ言われても困るけどさ」
そんな言い争いをしているうちに時間がどんどん過ぎていき、
結局走らないと間に合わなくなってしまった。
姉「あんたが最初からかぶるって言えばよかったのよ!」
弟「もうやだこの姉」
朝からヘルメットをかぶり、全力疾走する姉弟なんてあたしたちくらいかもしれない。
どうにか間に合った。
玄関でぜぇぜぇと肩で息をするヘルメットの二人組を、道行く生徒たちは奇異の目で見ていた。
姉「さて、それじゃ、また昼休みにね」
弟「姉ちゃん、これ脱いでもいい?」
弟が指でヘルメットを小突く。
姉「ダメ。そのまま教室に行きなさい」
弟「悪夢だ……僕はきっとこのことが原因でイジめられるんだ……
よう、ヘルメット!とか気さくに呼びかけられるんだ……」
弟はどんよりとしていた。
こういう顔も面白いし、可愛いなどと考えるあたしはイケない姉なのかしら。
姉「イジめられたら、あたしに言いなさい。また昔みたいに助けてあげるから」
恥ずかしい話だが、昔あたしは近所のガキ大将だった。
弟に絡んでいたガキ代将をやっつけたら、
何故かその翌日からあたしがガキ大将として祭り上げられていたのだ。
弟「それは断るよ」
姉「どうしてよ」
弟「格好悪いだろ。大の男なのに、姉ちゃんに助けられるなんて」
姉「そんなこと気にしないでいいの」
弟のために何かすることこそが、あたしの幸せなんだから。
弟「じゃ、ヘルメット脱いでも」
姉「それはダメ」
弟「…………」
男「今日は随分と奇抜な格好での登校だな」
教室に入るなり、見知った顔にからかわれる。
男「でもな、俺はそんなおまえも好きだぜ」
姉「あー、はいはい、ありがとう」
こいつとはもう十年来の付き合いで、もう毎日こんな会話をしている。
先述の弟に絡んでいたガキ大将というのは実はこの男で、
それが同学年の男の子だと知ったのはその翌日のことだった。
男「今日も素っ気ない返事だ」
姉「あたしがあなたに素っ気あったことって、あったかしら?」
男「いや、ないな」
姉「じゃ、いつも通りってことでいいじゃない」
男「たまにはいつも通りじゃない返事を聞いてみたいもんだぜ」
ぼやく男をスルーし、あたしは自分の席に座った。
昼休みになる。
男「昼休みだぜ。そして好きだ」
姉「あんた脈絡なさすぎ」
適当に相づちを打ちつつ、二人分の弁当箱を手に持つ。
男「今日も弟君と食べるのか?」
姉「ええ、そうよ。何か問題でも?」
男「たまには俺と食ってもいいんじゃないか」
姉「男くん」
あたしはニッコリと微笑んだ。
あたしのそんな顔を見て、男が期待の眼差しをこちらに向けてくる。
男「ああ、どうした」
姉「うざい」
男「いやっほぉぉぉ!」
男が窓から飛び降りる。
いつものことなので、誰も気に留めていない。
二階なので死ぬことはないだろう。
昼休みは中庭で弟とお弁当を食べる。学校生活で一番楽しみにしている時間だ。
ブラコンだの何だのとからかわれることもあったけれど、あたしは全然気にしていなかった。
でも、弟はそうじゃなかったようで。
弟「……姉ちゃん、もう一緒に食べるのやめよう」
中庭で合流するや否や、そんなことを言ってきた。
姉「え?」
一瞬、弟が何を言ったのかわからなかった。
弟「シスコンとか言われるのは、もう我慢ならないから」
それだけ言って、立ち上がろうとする。
姉「ちょ、ちょっと! 待って!」
弟「……何?」
姉「どうして今になって? そんなこと、今まで散々言われてきたことじゃない!」
弟「今日のヘルメットが原因で散々冷やかされたんだよ!
おまえは姉ちゃんの言いなりなんだなとか何とか!」
姉「そんなの言わせとけばっ……」
弟「もう姉ちゃんの自己満足に振り回されるのは疲れたんだよ!」
弟は言い捨てて、今度こそ立ち去っていく。
あたしには呼び止める気力は残っていない。呆然と弟の背中を見送るだけだ。
姉「うくっ……うっ……うぅ……」
今までに姉弟喧嘩は何度もしてきたけれど、あんなことを言われたのは初めてだった。
そうか、あたしが今までやってきたことは、全部自己満足だったのか。
そう考えると、悲しくて涙が止まらなかった。
泣きながら弟の背中を見ていると、さっき窓から飛び降りていった男が弟を呼び止め、
何か話を始めたかと思いきや、いきなり弟を殴りつけた。弟が地面に倒れる。
あたしは慌てて駆け寄った。
姉「ちょっと、何してんのよ! 大丈夫、弟っ?」
弟「うぐっ……いっつぅぅっ……」
弟は今ので口を切ったのか、口の端から血を流している。
男はそのまま立ち去ろうとした。
姉「待ちなさい」
男が無言で立ち止まる。
姉「何でこんなことしたの」
男「そいつにムカついたからだ」
姉「あんた!」
男の顔面を殴りつける。
男「ぐっ……」
姉「今のは弟の分! そしてこれも弟の分!」
更にもう一発殴ろうとするが、今度は避けられてしまう。
男「流石に二発も殴られてはやらねぇよ、じゃあな」
男が立ち去っていく。引き止めようかとも思ったが、今は弟を保健室に連れて行く方が先だ。
保健室の先生は手当を終えると、気を利かせてくれたのか
「職員室に用事があるから」と言って出ていってしまった。
姉「まったくあいつは! 昔から野蛮なんだから!」
弟「……いいよ、姉ちゃん。僕が悪かったんだ」
姉「何言ってるのよ。あんたは被害者じゃない」
弟「いや、思いっきり殴られて目が覚めたよ。姉ちゃんごめん、僕はひどいことを言った」
そう言って、深々と頭を下げてくる。
姉「……弟」
感極まって、また泣きそうになる。
姉「あたしこそごめんね。これからはもっと気をつけるから……ごめんね」
弟を抱きしめる。
あたしの弟、大切な弟。絶対に離れたくない。嫌われたくない。
弟「男さんのこと、怒らないでほしいんだ」
姉「……あいつと何かあったの?」
弟「どうして姉ちゃんが泣いてるのか聞かれて、僕が泣かせたって言ったんだ」
姉「それで殴られたの?」
弟「いや、その後に理由を聞かれて……それで、その」
そこで言いにくそうに、一度言葉を切る。
弟「うざかったからって言ったら、殴られた」
姉「……そうだったんだ」
弟「だから、あの人は、その何ていうか、悪い人じゃないんだ。
って、そんなことは姉ちゃんも知ってるだろうけど」
姉「う……」
ごめん弟、お姉ちゃん、あいつのことめっちゃ悪い奴だと思っちゃってた。
午後の授業が始まるギリギリの時間に教室に戻る。
いつもなら男の方から声をかけてくるのだが、先程あんなことがあったばかりだからか、
男は窓の外をぼんやりと眺めているだけだった。
姉「……ごめんなさい」
その背中に向けて、謝罪の言葉を口にする。
男がこちらを向く。さっきのことなどもう忘れたかのように笑っていた。
男「何のことだ?」
姉「ほっぺた、腫れてるじゃない」
男「あー、相変わらずおまえのパンチは強力だった。昔ボコボコにされたことを思い出したぜ」
姉「ごめんっ! 詳しい事情も聞かずに、いきなり手を出すなんて……あたしってば最低ね」
男「いいんだよ、おまえは昔からそうじゃねぇか。そんなおまえを、俺は好きになったんだ」
姉「もうっ、シリアスな場面なのに、そういう冗談を言うんだから」
男「性分なんでね。それより、弟君と仲直りはできたのか?」
姉「ええ、おかげさまで。その……ありがとうね」
男「そりゃよかった。おっと、先生が来たな。そんじゃな」
男はゆっくりと自分の席に向かって歩いていった。
授業が終わり、放課後になる。
男「放課後だぜ。だから好きだ」
姉「相変わらず脈絡なさすぎ」
男「たまにはノッてみてもいいんじゃねぇの」
姉「たまには他の女の子に言ってみたら?」
こいつは勉強はできないが、顔と運動神経が無駄に良いので女子からは人気がある。
告白も何度もされているらしいが、何故か全て断っているらしい。
男「俺は一途なんでね」
姉「ふぅん、好きな人いるんだ?」
男「…………」
男は何故か険しい表情になり、片手で頭を押さえた。
男「あのなっ、おまえ耳ついてんのかっ!」
姉「見ての通り、ついてるけど」
男「何度もおまえに好きだ好きだ言ってるじゃねぇか!」
姉「あのねぇ、あたしが言ってるのは、そういう冗談じゃなくって本命の人のことよ?」
男「鈍すぎるぜぇぇぇぇぇっ!!」
男はまた窓から飛び降りていった。
飛び降り癖がついて、四階から飛び降りたりしたら危険なので
今度直してあげないといけないかもしれない。
帰りはまた二人でバイクに乗って帰る。
弟「今日の晩ご飯は何?」
姉「冷やし中華よ」
弟「僕も手伝うよ」
姉「ええっ?」
弟がそんなことを言ってきたのは初めてだった。
姉「いいわよ別に、簡単な料理だし」
弟「僕が手伝いたいんだ。姉ちゃんが嫌だっていうなら、無理にとは言わないけど……」
姉「う、ううんっ、嫌なんてことないわ! それじゃ、手伝ってくれる?」
弟「うん、まかせといてよ!」
そして夕食時。
姉「でも、いきなり手伝いたいなんてどうしたの?」
冷蔵庫から食材を取り出しながら訊く。
弟「昼のお詫びにと思って。
あと……考えてみたら、今まで炊事を全部姉ちゃんにまかせっきりだったから」
姉「別に気にしないでいいわよ。あたし料理好きだし」
弟「姉ちゃんの負担を減らしたいし、僕もそのうち一人暮らしすることになるだろうから、
そのときのために料理はできるようになっておきたいんだ」
姉「へぇ……」
いつまでも子供だと思ってたけど、そんなことまで考えるようになったんだ。
弟「ていうか、来年には姉ちゃんは進学して家を出るから、
来年から一人暮らしみたいなものだしね」
姉「それは……」
正直、悩んでいる。
弟を一人にするのは不安だからだ、というのは建前で。
弟と離ればなれになるのが嫌だからだ。
でも、離れたくないから進学しないなんて言ったら
単身赴任のお父さんにも、弟にも怒られちゃうわよね。
だから、せめて残りの一年を目一杯楽しもう。
姉「……わかった、弟が一人でも生きていけるように、あたしが色々教えてあげる」
弟「よろしくお願いします、先生」
姉「言っておくけど、あたしはスパルタよ」
弟「よく知ってるよ」
弟が苦笑する。可愛いなぁ、押し倒したいなぁ。
二人で冷やし中華を作る。
といっても、あたしは監督しているだけで、ほとんど弟が作っている。
今はキュウリを刻んでいるところだった。手が危なっかしい。
姉「弟、左手……」
弟「いたっ!」
注意しようとしたまさにその瞬間、指を切ってしまったらしい。
姉「大丈夫っ?」
弟「ああ、うん、深くは切ってないから大丈夫」
姉「で、でもっ、こんなに血がっ! 指から!」
あたしは混乱していた。
多分そのせいだろう、あんなことをしてしまったのは。
弟「ね、姉ちゃんっ?」
姉「んっ……ちゅぷっ、れろ……」
あたしは弟の指を無我夢中で舐めていた。
血の味がする。
混乱のせいか興奮のせいか頭がクラクラしてくる。
姉「ちゅぅっ……ちゅっ……ぷはっ……」
口から指をゆっくりと引き抜くと、舌と指との間に唾液の橋ができる。
それは何だか、とてもエロスでエロティックでエロティシズムな光景だった。
弟「え、ええっと」
弟は困っているような恥ずかしがっているような、そんな顔をしている。
その顔を見ると、自分が何だかとんでもないことをしたように思えてきて、急激に顔が熱くなってきた。
姉「な、ななな舐めれば治るのよっ、ここ、こんな傷は!」
どうにか取り繕おうとしたが、あたしの声は震えまくっていた。
姉「とととにかくっ、絆創膏とか貼ってきなさい! 続きはあたしがやるから!」
弟「う、うん、わかったよ」
弟が場を離れる。
姉「はぁっ……色々危なかった……」
冷静になって考えると、別にエロいことじゃないのよ。
あたしは何をあんなに動揺していたのやら。
姉「はぁ」
一つ溜息を吐き、調理を再開する。
姉「…………」
キュウリをトントンと刻んでいく。
あたしも料理をし始めたころは、よくああやって指を切っていたっけ。
流石に今ではそんなこともなくなったけれど、いや、待てよ?
姉「あたしも指を切れば……」
弟に舐めてもらえるのではないだろうか。
姉「って何考えちゃってるのよ、あたしはぁぁぁ!」
余計なことを考えたせいだろうか。あたしは手から包丁を落とし、そして。
グサッ。
姉「にぁぁぁっ!」
包丁の先端が足の甲に刺さり、それから床を転がっていった。
姉「いっつぅぅぅっ……」
靴下を脱ぎ、傷口を確認する。
幸いあまり深くはないようだったが、血がどくどくと流れ出てきている。
さっきの弟より重傷かも。ああもう、何やってるんだか。
弟「姉ちゃん、どうし……うわっ、血!」
タイミング悪く弟が戻ってくる。
姉「ちょっとね。ごめん、あたしも絆創膏貼ってくるわ」
弟「それは病院に行った方がいいよ! ハリーハリーハリーハリー!」
弟が取り乱す。
男よりも女の方が血や痛みに強いと言うけれど、なるほど、こういうことなのかもしれない。
姉「平気よ。さっきも言ったでしょ、こんな傷は舐めれば……って自分の足を舐めるわけにもいかないか」
姉「じゃあ僕が舐めてあげるよ!」
姉「えぇぇぇぇっ!」
弟「いや、舐めないから。救急箱取ってくるから、ここでじっとしてて」
あたしの一人芝居を見て、弟は冷静になったようだ。
弟に傷の手当てをしてもらう。
あたしは椅子に座り、その足下に弟がしゃがんでいる。
弟「本当にあまり深くはないんだね、安心したよ」
姉「そうよ。別にザクッと突き刺さったわけでもないしね」
弟「すぐに血も止まったし、あとは絆創膏を貼るだけでよさそうだね」
姉「ええ、手当てしてくれてありがとうね」
弟「でも、姉ちゃんが料理で怪我なんて珍しいなぁ。どうしたの?」
姉「ちょっと考え事をしていてね」
弟「へぇ、何か悩み事?」
姉「どうすれば弟に舐めてもらえるかなってことを、少し」
弟「うわぁ……」
予想以上に引かれてしまった。
弟「それでわざと怪我したんじゃないよね」
弟の視線が痛い。
姉「ちっ、違うわよ! それも一瞬考えたけど!」
弟「一瞬でもそんなこと考えないでよ!」
姉「あ、あたしだって別に好きで考えたわけじゃ……いや好きで考えたんだけどさ……」
弟「姉ちゃんって変態だよね」
姉「なんでよーっ!」
弟に変態扱いされたあたしは、ちょっぴり涙目。
弟「ノーマルな人はそんなこと考えないよ」
姉「くっ……ええ、そうよ! あたしは弟に欲情するアブノーマルな姉よ!」
弟「そんなぶっちゃけられても困るけどさ」
姉「というわけで、足舐めなさいよ! ほら!」
ずい、と足を弟の眼前に突き出す。
弟「どういうわけか全然わかんないよ!」
姉「ええ、あたしはあんたの言うとおり変態よ! だから足だって舐めさせるのよ!」
弟「と、とりあえず落ち着こうよ、姉ちゃん」
姉「おちちゅいてるわよ!」
弟「噛んでるよ! 全然落ち着いてないよ!」
姉「う、うるさいわね! 舐めないと蹴るわよ!」
弟「ついに脅迫を!?」
弟「うぅ……わかったよ、ちょっとだけだよ?」
弟が上目遣いでこちらを見てくる。
姉「はぁ、はぁ、そ、その上目遣い、もしかして誘ってるの?」
弟「い、意味がわからない!」
姉「ごめん、あたしも今のはちょっと反省したわ……」
弟「じゃ、じゃあ舐めるよ」
姉「う、うんっ」
弟の舌が足の裏に触れる。
姉「ひぅっ」
弟「ね、姉ちゃん?」
姉「お、弟ぉぉ……そ、そんなとこ舐めちゃ嫌ぁぁっ……」
弟「人が聞いたら誤解するようなこと言わないでよ! ねぇ!」
姉「だ、だって、くすぐったいのよっ!? もっと別のとこにしてよ!」
弟「何で怒られてるんだろう、僕……」
今度は親指の裏を舐めてくる。
姉「んぅっ……」
弟「だ、だから変な声出さないでよ!」
姉「だ、だってぇっ」
弟「はい、もう終わり!」
弟が口を足から離す。
姉「えぇぇぇっ」
弟「いや、そんな物欲しそうな顔をされても困るけどさ」
姉「もうちょっとだけ!」
弟「やだよ! ていうか、僕はどうしてこんなことさせられてるんだよ!」
姉「500円あげるから!」
弟「せこい上に卑劣だよ!」
姉「はぁっ……わかったわよ……」
弟「そんな顔されると、僕が悪いみたいじゃないか」
姉「じゃあ、あたしは自分の部屋でセルフ足舐めしてるから……」
弟「ちょ、ちょっと待ってよ! それは人としてやっちゃいけない行為だよ!」
姉「それじゃあね」
どんよりとしながら立ち上がろうとする素振りを見せる。
弟「わ、わかったよ! 僕が舐めるから!」
姉「えっ……?」
弟「セルフ足舐めとかする人を身内には持ちたくないよ……」
姉「弟……」
計画通り
弟が足舐めを再開する。
姉「ふぁぅっ……うぅっ……」
弟「だ、だからその声やめてよ! 変なことしてるみたいじゃないか! いや十分変なことしてるけど!」
姉「だ、だって、声出ちゃうんだものっ……」
弟「ああ、僕はいったい何をやっているんだろう……」
弟は軽くブルーになっているようだ。
姉「次は指をしゃぶってくれない?」
弟「うぅ……こんな感じ?」
弟が足の親指を口に含む。
姉「んんっ……そう、それから、舐めたり吸ったりして……」
弟「ちゅぅっ……ちゅっ……れろ……」
姉「あぁぁぁぅっ……」
弟「れろれろ……ちゅぅ……」
姉「はぁ、はぁ……そう、いい感じ、別の指もひとつずつ、順番にね」
弟「……うん、わかったよ」
何だかんだと言っていた弟も覚悟を決めたのか、忠実に要求に従ってくれた。
そして、すべての指が舐められ終わったころには、あたしはもう。
姉「あ、ありがとう弟、もういいわよ」
弟「う、うん」
姉「ちょっとトイレ行ってくるわね」
トイレに入り、下着を脱ぐ。
姉「こ、これは我ながら、何ともすごいわね……」
あそこがびしょ濡れになっていた。触ると、ぬるぬるしている。
姉「弟に足舐められて、こんなことに……」
あたしって、弟の言うとおり変態なのかも。
入り口のあたりで指を動かすと、くちゅくちゅといういやらしい音がする。
ゾワゾワというか、ビリビリというか、文字ではうまく表すことができない気持ちよさがあそこに広がっていく。
姉「はぁっ……あぁぁ……」
夢中になって指を動かす。
制服をはだけさせ、ブラを外し、胸を揉む。
そうすることで快感が下半身だけにではなく、全身へと広がっていく。
姉「はぁぁぁっ……気持ち、いっ……」
左手で乳首を、右手でクリトリスをくりくりとイジる。
執拗にそれを続けていると、やがて絶頂が近づいてくる。
姉「んーーーっ……んんーっ!」
次第に指の動きが激しく、大胆になっていき、これ以上はもう速く動かせないというとき。
姉「ふあぁぁぁぁぁーーっ!!」
あたしは達した。
トイレットペーパーで後処理をし、トイレから出る。
弟「…………」
台所に戻ると、弟は何故か顔を赤くしてうつむいていた。
姉「どうしたの?」
弟「えっ、あ、い、いやっ、何でもないよ!」
姉「どう見ても、何かある顔してるじゃない」
弟「な、何でもないったらないよ!」
姉「何よ。言ってみなさい」
弟「だから何でもないって!」
姉「言わないと蹴るわよ」
弟「ひぃ! すぐそうやって脅さないでよ!」
姉「冗談よ。ま、無理には聞かないけど」
弟「…………」
弟はそれからずっと何か言いたげな顔をしていたが、結局黙っているままだった。
それからまた弟の調理の監督に戻り、冷やし中華作りを再開する。
弟「ね、ねぇ、姉ちゃん……」
弟がハムを切りながら言う。
姉「何? 集中を切ると、指も切るわよ」
弟「……いや、その、やっぱり何でもないよ」
姉「変な弟ね」
弟「…………」
二人分の冷やし中華が食卓に並ぶ。
弟「ね、姉ちゃん!」
姉「どうしたのよ、さっきから」
弟「言うか言うまいか迷ってたんだけど……やっぱり姉ちゃんのためにも言っておこうと思う」
姉「な、何?」
ドキドキする。
もしかして、あたしのことを好きになっちゃったとか言うんじゃ……。
すごく嬉しいけど、あたしたちは姉弟だから結婚はできないし、ああ、どうしよう!
弟「そ、その、お、おお、おおお」
姉「お?」
弟「オナニーするときは、声をもう少し抑えた方がいいよ!」
お茶の間の空気が凍り付いた。
姉「な、なな、何のこ、ここ、ことかしら?」
焦りと緊張で声が震えまくる。
まさか外に声が漏れてた?
弟「声がこっちまで聞こえてたんだよっ……」
やっぱりかー!
弟は顔を真っ赤にしている。
姉「う、あ、いや、その、あれは、そう、腹筋! 腹筋してたのよ!」
弟「トイレで腹筋する人なんていないよ!」
姉「あた、あたたしはしゅるのよ!」
噛みまくる。
弟「だとしても、あんな声出しながら腹筋する人はいないよ!」
姉「あたしはするのよぉ!」
羞恥で顔が熱くなり、情けなさで涙がこみあげてくる。
鏡で今の自分の顔を見たら、さぞや情けないな表情をしているのだろう。
弟「特に最後のは、家の外にまで聞こえてたかも……」
姉「うそぉぉぉぉっ!」
弟「だ、だから、その、オナニーするときは、声をもう少し……」
姉「にぁぁぁぁぁっ! 違うー! 腹筋してたのよー!」
弟「じゃ、じゃあ腹筋するときは、声をもう少し抑えてね」
姉「うぅぅぅっ……」
とんだ辱めを受けてしまった。
時間は飛んでお風呂後。
姉「あぁ、いいお湯だった」
弟「じゃあ、僕も入ってくるよ」
姉「ええ、さっぱりしてきなさい」
弟が脱衣場に入っていくのを見届けると、牛乳を一杯飲み干し、足音を潜ませて脱衣場前のドアに近づいた。
少しだけドアを開き、中を覗くと、ちょうど弟が下着を脱ぐところだった。
仮性包茎のおちんちんが露わになる。
姉「はぁ、はぁ……」
弟は息を荒げながらあたしの下着をおちんちんに巻き付け……
というようなことは全くせずに、そのまま浴室へと入っていった。
姉「スルーされた……」
さっき脱いだ下着があんまり可愛くなかったからかしら。
辱めを受けた仕返しに弟のオナニーでも見てやろうかと思ったのに、残念ね。
仕方がないので弟の部屋に潜入し、おもむろに下着を脱いだ。
姉「ムラムラとするがいいわ」
その下着を枕元に置く。
これで寝る前に部屋を覗けば、そこには猿のように自慰行為に耽る弟の姿がっていう寸法よ。
あたしは自室で本を読みながら待機していると、部屋のドアからノックの音がした。
姉「入っていいわよ」
弟が顔を覗かせる。
困ったような、恥ずかしがっているような、そんな微妙な顔をしていた。
弟「何か僕のベッドに姉ちゃんの下着があったんだけど……」
姉「あら、どうしてかしら?」
弟「…………」
弟の白い目が向く。
まずい、今日の足舐めやら腹筋やらが原因で、弟のあたしへの信頼は限りなく0に近くなっているようだ。
弟「とりあえず返すよ」
弟に下着を手渡される。
姉「もしかして、もう使っちゃった?」
弟「な、何に使うのさ!」
姉「巻いたり、こすったり」
弟「す、するわけないだろ、バカ!」
弟は部屋から出て行ってしまった。
怒らせてしまったのかもしれない。
どうにかして弟のオナニーを見たい。
ていうか、弟ってオナニーするのかしら。
うーん、オナニー、オナニー、オナニー。
そんなことを考えているうちに、あたしは眠ってしまった。
__
 ̄ ̄ ̄二二ニ=-
'''''""" ̄ ̄
-=ニニニニ=-
/⌒ヽ _,,-''"
_ ,(^ω^ ) ,-''"; ;,
/ ,_O_,,-''"'; ', :' ;; ;,'
(.゙ー'''", ;,; ' ; ;; ': ,'
_,,-','", ;: ' ; :, ': ,: :' ┼ヽ -|r‐、. レ |
_,,-','", ;: ' ; :, ': ,: :' d⌒) ./| _ノ __ノ
- 関連記事
-