姉「にしても積極的ね、あなた。ここ上級生の教室よ?」
女「恋はあらゆる障害を超えるんです! 皆さん、こんにちは」
男「うぃす」
友「こんにちは、女ちゃん」
女「男さんははじめましてですね」
男「ああ」
女「よろしくお願いします」
男「おう、よろしく」
二人が握手する。
この二人が手を組んだら色々と面倒そうだ。
中庭に移動し、弟も呼ぶことにする。
弟「何だか大所帯だね」
姉「まあ、なんというかね、うん」
女「お姉様っ、おかずの取りかえっこしましょう!」
友「お姉ちゃんーっ、お弁当お弁当ーっ」
男「お姉ちゃんーっ、俺にも弁当ーっ!」
三人が引っ付いてくる。
弟「そして大人気だね」
姉「嬉しいような迷惑なようなね……はい、これお弁当」
弟に弁当箱を渡す。
弟「ありがとう」
友「ええーっ、お姉ちゃん、あたしにはーっ」
姉「あんたのは、弟と食べないときって条件だったでしょ」
友「ええぇぇぇっ、この、この空腹はどうすればぁぁぁっ」
弟「僕のでよければ分けましょうか?」
友「うぅっ、弟君、ありがとうっ……ヒデキ感激!」
弟「ヒデキって誰ですか」
友「ええっ、ジェネレーションギャップ!?」
姉「いや、そんなに世代が違うわけでもないけどね」
友「ああ、でも、おはしがないよね、やっぱいいよ」
弟「ああ、それじゃあ、はい、あーんしてください」
弟が卵焼きを箸で摘み、共に差し出す。
姉「なっ!」
友「えぇぇっ」
友の目がこちらを向く。
姉「た、食べればいいじゃない」
友「い、いいの、お姉ちゃん?」
姉「別にあたしに許可取るようなことじゃないでしょっ」
友「そ、それじゃあ、あーん……」
友が口を開く。その中に弟の箸が……。
男「ぱくっ、んぐんぐ……うめぇぇぇっ!」
男が横から卵焼きを奪い去っていった。
その場にいる全員が沈黙する。
友「卵焼きの恨みぃぃぃっ!」
友が男の顔面を蹴った!
男「縞パン!!」
謎の断末魔をあげ、男はその場に倒れた。
女「お姉様お姉様っ、はい、あーんしてください!」
姉「うぅ、来ると思ったわ……あーん」
ウィンナーを食べさせてもらう。
姉「うん、美味しいわ」
女「ありがとうございますっ」
あたしたちが恋人のようなことをしている隣で、友は男を蹴り続けていた。
友「卵焼きの恨み! 恨み!」
男「のぉ! おぅ!」
弟「と、友さんっ、せめて顔面じゃなくて、お腹にしてあげて!」
弟は意外と黒いのかもしれない。
女「…………」
女ちゃんが期待の眼差しを向けてくる。
これはやはり、やれということなのだろうか。
姉「は、はい、女ちゃん、あーん」
女「あーんっ……んぐ、んぐ……美味しいですっ」
うぁぁ、こっ恥ずかしい。何やってんだろ、あたし。
弟「はい、あーん」
友「あ、あーんっ……んんっ、おいちぃっ」
弟「うん、姉ちゃんの弁当は美味しいよね」
男「弟君っ、俺にも俺にも!」
弟「はい、あーん」
男「あーんっ……うめぇぇぇっ! 超うめぇぇぇっ!」
二人に弁当を食べさせる弟は飼育員のようだった。
いいなぁ、あたしも弟にあーんされたいなぁ……。
弟「はい、姉ちゃんにも、あーん……なんちゃって」
弟が箸を差し出してくる。
姉「いただきますっ! ぱくっ、もごもごもご!」
友「おおっと、すごい勢いだぁーっ!」
男「入れ食いだな」
弟「あはは、姉ちゃん、お腹空いてたんだね」
さて、そんなこんなしながら食後。
昼休み終了までにはまだ時間がある。
男「さて、飯も食ったし鬼ごっこでもするか」
よくわからないことを言う男を全力でスルーする。
姉「友、今日も一緒に帰りましょっか」
友「え? わたしは嬉しいけど、いいの?
姉「ええ、昨日友情を大切にしようって思ってね。もちろん弟と女ちゃんもね」
女「はいっ、嬉しいです!」
弟「うん、わかったよ」
男「鬼ごっこ楽しいぜ! はい、ターッチ!」
男が友にタッチし、駆けだしていく。
友「えっ、えっ? じゃあ、タッチタッチ、そこにタッチ!」
友が同様に女ちゃんにタッチし、駆けだしていく。
姉「あいつらは子供か……」
女「タッチです、お姉様」
女ちゃんがよりにもよって胸にタッチしてきて、走り去っていった。
姉「…………」
弟「……じゃ、じゃあね、姉ちゃん」
姉「ターッチ!」
逃げ出そうとした弟にタッチし、あたしも走った。
結局乗せられてしまった。
姉「ま、食後の運動と考えれば……」
弟「姉ちゃんー!」
弟が追ってきた。
弟はあたしより足が遅いので、まあ捕まらないだろう。
弟「うぁっ」
弟がつんのめり、その場に転がる。
そうすると、あたしはもうダメだ。
考えるより早く体が動き、弟の元へと駆け寄っていく。
姉「大丈夫っ?」
弟「ごめんね姉ちゃん、タッチ!」
弟が走り去っていった。
姉「……うん、わかってはいたのよ、うぅ」
姉「さて、どうしようかな」
各人のスペックを整理してみる。
姉:100m、13秒後半
弟:100m、14秒後半
友:100m、15秒前半
女:未知数
男:100m、12秒台
姉「狙うなら友か女ちゃんかしら……」
とりあえず索敵しながら歩く。
前方に男発見。でもあいつはダメだ、レベルが違う。
男「よう、追ってこねぇのか?」
姉「不毛なことはしない主義なのよ」
男「昔のおまえはそんなんじゃなかったがな。俺をいつまでも追ってきたもんだぜ」
姉「そういや、昔は近所の子供集めて鬼ごっことかしてたわね」
でも、こいつを捕まえることは一度もできなかった。
男「来いよ。今日こそ俺を捕まえてみな」
男が走っていく。
放置してもいいんだけど、どうしようかしら。
走ってる途中で別の標的が見つかるかもしれないし、とりあえず追ってみましょうか。
全力で走る。でもダメだ、どんどん引き離されていく。
姉「ぜぇっ、ぜぇっ、ほんとっ、無駄なっ、運動神経、ねっ!」
あれで帰宅部というのが信じられない。
どこの運動部に行っても重宝されるでしょうに。
もう諦めようかしら。
男「遅ぇーぞ! そんなもんか!」
プッツン。
姉「あんたが速すぎんのよ!」
ていうか、何で鬼ごっこなんてしてるのよ、あたしは!
準備運動もせずにいきなり動いたせいだろうか。
足がもつれ、走っていたせいもありすごい勢いで前方にヘッドスライディングする。
地面が近づいてくる。まずい、受け身!
姉「くぅっ」
不幸なことに、転んだのは芝生ではなくコンクリートの上だった。
姉「いっつぅぅっ」
両腕で顔面を庇ったので、両の手の平と腕を擦りむいてしまったようだ。
男「大丈夫か!」
男が慌てて駆け寄ってくる。
姉「ふっふっふ、かかったわね、ターッチ」
ちょこんと指で男を小突く。
普通にタッチしたら制服に血がついてしまうからだ。
男「ああ、かかったかかった。保健室行くぞ」
姉「うぅーっ、いったぁぁっ……」
男「転んで怪我するなんて、子供のときを思い出すな。ほれ」
男がしゃがみ、背中を向けてくる。
おぶってやるということだろうか。
姉「へ、平気よっ、歩けるからっ」
男「いいから乗れ。じゃねぇとお姫様抱っこすんぞ、てめぇ」
姉「うーっ……屈辱的だわ……」
渋々と男の背中に乗っかる。
男「悪いな。俺が鬼ごっこなんて提案したせいで」
姉「いいわよ。何だかんだでちょっと楽しんだし」
周囲の生徒の視線が恥ずかしい。
というか、考えてみると、鬼ごっこなんてしていたこと自体恥ずかしい。
姉「うぅーっ、足を怪我したわけでもないのに、何でこんなっ……」
というか、今気がついたが、おんぶなんてしたら男の制服に血がついてしまうんじゃないだろうか。
男「すまん、俺も気が動転していたらしい。よく考えたら、おぶる必要なかったな」
姉「血ついちゃったんじゃない?」
男「いいんだよ、こんなもん。上はどうせただのワイシャツだ」
姉「……ごめんなさいね」
男「謝ることじゃねぇよ」
男「すんませーん」
男が保健室のドアをノックするが、返事はない。
男「入っちまうか」
姉「そうね」
中に入ると、もぬけの殻。
男「職員室にでもいってんのかな」
姉「もう降ろしてもらってもいいわよ」
男「はいよ」
何だかんだでここまでおぶってもらってしまった。
姉「……その、ありがとう」
男「いいってことよ。じゃ、勝手に道具使わせてもらって手当てしちまうか」
姉「勝手に? まずいんじゃないの?」
男「別に構いやしねぇだろ。ちょっと染みるだろうけど、そこの洗面台で傷口洗ってきな」
姉「ん、わかった」
こんなときのためだろうか、保健室には洗面台がある。
傷口を洗うと、久々に味わうビリビリという痛みが。
姉「っつぅぅぅっ……」
昔はよく外を走り回って、こうして傷を作ったものだった。
それから椅子に座り、男に腕を差し出す。
男「結構派手にやらかしたな」
姉「全力疾走してたからね」
男が傷口にガーゼを宛がい、包帯を巻いていく。
慣れていないのだろう、巻き方がどこか拙い。
男「よっと、こんなとこか」
姉「うん……ありがとう」
男「元は俺が原因だしな、気にすんな」
姉「それこそ気にしないでいいわよ。ノッたのはあたしだしね」
男「そう言ってもらえると、気が楽になるね」
姉「え、ええ」
何故か気恥ずかしい。
今までこいつと一緒にいて、こんな気持ちになったことはないのに、どうしてだろう。
手当てをしてもらったから?
男「キスでもするか?」
姉「なっ、ばっ、調子に乗らないで!」
男「顔赤いぞ」
男が顔を寄せてくる。
姉「あ、う、そんな、ことっ」
やばい、これは逃げられない。
このままじゃ、こいつとキス、しちゃう。
友「リモコン下駄ー!」
友が保健室に入ってくるなり、上靴を飛ばしてきた。
男「うぼぉっ!」
それが男の頭に命中し、男がその場に倒れ込む。
すごい、流石リモコン下駄!
友「危ないところだったね、お姉ちゃん」
姉「と、友ぉっ、助かったわ!」
抱き合うあたしたち。
友「こいつは! こいつは!」
男「はぐっ! ぐはぁっ!」
友が男を足蹴にしまくる。
姉「ま、まったくよ! 調子に乗って!」
あたしも男を踏みまくった。
弟「姉ちゃん、大丈夫っ?」
女「お姉様!」
続けて、弟と女ちゃんが保健室に入ってくる。
姉「え、あ、大丈夫だけど、何で?」
友「お姉ちゃんが男くんに拉致されてるって話を聞いたんだよ!」
弟「ちっ、違うよ! 男さんが怪我した姉ちゃんをおぶってたって話だよ!」
女「お姉様、腕を……」
姉「あ、ああ、うん、ちょっとね」
友「大丈夫?」
姉「うん、大したことないわ」
弟「はぁっ……よかったよぉぉっ」
弟が安堵の溜め息を吐いていた。
心配してくれたのかな。だとしたら、嬉しいな。
それよりも反省すべきは、男とキスしそうになったことね。
あたしって実は場の空気に流されやすいのかも。
姉「はぁ、ほんとさっきは危ないところだった……」
友「どうしやす、お姉ちゃん。こいつ、やっちまいますかい」
姉「手当てしてもらった恩もあるし、いいわよ。あと口調直しなさい」
友「あいあいさー」
弟「何かあったの?」
友「実は二人が」
姉「わーっ! 何でもない何でもない!」
友「わぷぷぷぷぷ」
慌てて友の口を塞ぐ。あんなこと弟に知られたくない。
弟「二人が?」
姉「ちょっと男と二人でボクサーとトレーナーごっこをね! ほら男起きて!」
伸びている男を無理矢理起こす。
姉「しゅっしゅっ!」
その脇腹にパンチをする。
男「うっ! ぐっ!」
弟「ボクサーとトレーナーっていうか、ボクサーとサンドバックみたいだよ……」
弟は軽く怯えていた。
姉「さて、もうすぐお昼休みも終わりね、教室に戻りましょ」
友「ほいほい、ほら行くよ、男くん」
男「痛いぜ……もうここで寝りゅ……」
友「甘えるなボケー!」
男「いてっ、いてぇっ! 蹴るなよ、てめぇっ」
ガスガスと蹴りながら友が男を連れて行く。
女「お姉様、それではまた放課後に」
姉「うん、帰りにね」
女ちゃんが一礼し、保健室から出て行く。
そして弟と二人きりになる。
弟「それじゃ姉ちゃん、後でね」
姉「あ、ちょっと、待って」
弟が出ていこうとするのを、呼び止める。
弟「うん?」
弟が振り返る。そしてあたしは弟に。
姉「ちゅっ……」
弟「んんっ!?」
キスをした。
唇を押しつけるだけの、子供じみたキスだった。
姉「ふぅっ……」
顔が熱い。
ついに、弟とキスしてしまった。
弟「ね、姉ちゃんっ?」
弟はただただびっくりした顔をしていた。
姉「ごめんっ、そのっ、初めてのキスは、弟とが良かったの!」
さっき男とキスをしかけて、そういった危機感を煽られた。
もしかしたら、これから先もあんなことがあって、ファーストキスを弟以外としてしまうんじゃないかと。
そう思い、弟にキスをしたのだった。
弟「え、ええっと……」
姉「そ、それじゃ、また帰りにね!」
これ以上弟の顔を見ていたら、羞恥で頭がどうにかなってしまいそうだ。
あたしは弟を置いて、保健室から走り去った。
授業が終わり、放課後になる。
姉「さて、校門で弟と女ちゃんと待ち合わせね。行こっか、友」
友「うん、今日はまっすぐ帰る?」
姉「んー、どこか遊びに行く?」
おかしい、いつもならここで男が輪に入ってくるのに。
見ると、丁度窓から飛び降りていくところだった、
姉「あら、珍しい」
友「何か用事があるんじゃないかな」
姉「ま、別にいいけどね」
気にせず、友と教室を出た。
校門で弟と女ちゃんと合流する。
もしかしたら男もいるかもしれないと思ったが、いないようだった。
友「よーっすー」
女「お姉様、友さん、ごきげんようです」
弟「や、やぁ」
姉「や、やっほう」
先程のキスのせいか、ぎこちない姉弟が二人。
友「そいじゃ、れっつらごー!」
友の掛け声を合図に、四人が歩き出す。
姉「今日はどうする?」
弟「うーん、この町は遊ぶ場所があんまりないからねぇ」
友「お姉ちゃんちでいいんじゃない? 話してるだけでも十分楽しいよ」
女「そうですね、わたしもそう思いますっ」
姉「ふぅん、じゃ、うちでいいのね」
家に到着し、中に入る。
男「おかえりなさい、あなた」
何故かエプロンをつけた男に出迎えられた。
姉「どっせぇぇい!」
とりあえず顔面に回し蹴りをかましておく。
男「純白!」
男は謎の断末魔をあげ、その場に倒れた。
姉「何してんのよ、あんたは」
男「いや、こういうのも面白いかなぁって思ってよ」
男が頬を押さえながら言う。
友「うーん、どうやって入ったの? 鍵開いてた?」
弟「ちゃんと閉めただけど……」
男「おう、問題はそこだった。先回りしてみたが、何とドアが開いてないじゃないか」
姉「当たり前でしょうが!」
男「だが、二階の窓が開いてるのを見つけたんでな。木からお隣さんの屋根によじ登って、
そっからおまえんちの屋根に飛び移った。で、窓から家の中にって寸法だ」
その場の全員が引いていた。
皆様、二階だからって油断して窓を開けたまま外出しないように。
女「普通に空き巣じゃないですか……」
友「わたしも犯罪者の友達は、ちょっと……」
男「別に何も取っちゃいない。ちょっとお邪魔しただけだ」
姉「それでも犯罪なのよ!」
弟「ま、まあまあ、悪気はないみたいだし」
男「そうだそうだ!」
姉「弟、こいつを擁護しても調子乗るだけよ」
友「そうそ、弟君。これは、ちょっと雑に扱うくらいが丁度いいんだよ」
友が男を蹴る。
男「きゃぅん! きゃいん!」
男が弟の後ろに隠れた。
男「怖いよー弟君。みんながイジめるよー」
弟「ま、まあまあ、友さん、暴力はよくないよ」
友「むぅーっ、弟君に言われたら仕方ないなぁ……」
姉「そいつ、仮にも一度あんたをブン殴ってるのに、よく庇うわね」
弟「あれは僕が悪かったから、いいんだよ。むしろ感謝してる」
男「いや、すまん、あのときは俺も悪かった。いきなり殴るなんて、ひどかったよな」
弟「いやいやっ、そんなっ」
男「弟君は謙虚で優しいねぇ。惚れちまいそうだぜ」
弟「ぼ、僕にはそっちの気はないんで」
弟はちょっと引いていた。
5人分のお茶とお菓子を用意し、居間でのお茶会が始まる。
友「ねぇねぇ、男くんって誰かと付き合わないの?」
男「いつだかにも言ったが、俺は一途なんでね」
こちらに目を向けてくる。
姉「一途も度を超すとストーカーっていうのよ」
男「手厳しいぜ」
友「ふぅん、女ちゃんは?」
女「ふふっ、わたしも一途ですので」
男同様、こちらに目を向けてくる。
姉「そ、それは、どうも」
どうにもまだ慣れない。
友「それじゃ、弟君はっ?」
何か弟のときだけテンション違くないか、友。
弟「え、僕? 僕は……」
ちらっとこちらを見てくる。
先程の保健室でのキスが脳裏をよぎり、また顔が熱くなってくる。
それは弟も同じなようで、顔を赤くしていた。
弟「僕は、そういうのはまだ……」
友「でも、女の子に興味ないってわけじゃないんでしょ?」
弟「そりゃもちろん、そうですけど」
友「じゃ、お姉ちゃんと女ちゃんとあたし、この中だと誰が一番好みっ?」
姉弟「えぇっ!」
あたしと弟の声が重なる。
弟「そ、それはっ……」
弟が三人を順に見回す。
男「おいおい、弟君が困ってるじゃねぇか。下世話な質問はやめてやれよ」
友「男くんは黙ってなさい! ずびし!」
友が男の首筋にチョップを入れる。
男「いてぇ! おまえなっ」
弟「だ、大丈夫ですから、男さん」
男「そうかい? そうならいいんだが……」
弟「僕は……僕が一番好きなのは……」
弟「僕は……姉ちゃんが一番好き、かも」
姉「なっ……」
弟のその発言に、どんどん顔が熱くなってくる。
弟も同じようだ。
友「わーおー、シスコン発言ー!」
男「ほう」
女「ぬぬ、敵ですか……」
友は面白がっているような、男は感心したように、女ちゃんは警戒するように、
三者三様の反応をしていた。
男「それじゃ、両思いの二人を二人っきりにしてやろーかね」
男が立ち上がる。
姉「ちょ、ちょっとぉっ」
女「いいんですか、先輩?」
男「……いーんだよ、おら、行くぞ」
男が二人の手を引っ張っていく。
女「むぅ、不満です」
友「そんな聞き分けのいい良い子ちゃんにはなりたくないぃー!」
ずるずると二人が引きずられていく。
姉「ま、待ってってば!」
男「じゃ、また明日な」
友「うぅーっ、また明日ね、お姉ちゃん、弟くーん!」
女「また明日です」
ドアが閉まった。
そんなこんなで、二人っきりにされてしまった。
姉「……」
弟「……」
顔を合わせることができない。
二人して顔を赤くしている。
姉「あ、あのさっ、さっきの、本気?」
意を決して訊いてみる。
弟「……うん、何か、何でかな……姉ちゃんのこと、こんなに意識したことなかったのに」
姉「さっきのキスから意識するようになった……?」
弟「う、うん……そう、かも」
姉「じゃあ、またキスすれば、もっと、意識、するかも」
目を閉じて、弟に顔を寄せていく。
すごくドキドキする。キスまでの一瞬が、とても長かった。
姉「ちゅっ、ん……」
弟「んっ……」
あたしたちは、二度目のキスをした。
一方その頃
友「ねぇ、本当に良かったの?」
男「いいんだよ」
女「でも、先輩もお姉様のことが好きだったんじゃないですか?」
男「好きだからこそ、身を引くときもある」
友「わたしにはわかんないねー。恋は情熱だよ。奪い合いだよ!」
女「思い返してみると、先輩はいつもすぐに身を引いてますよね」
友「要はヘタレなんだよねー」
男「うるせぇ」
友「そのくせ、二人きりになったときにはキスとかしようとしてるし」
男「あのときは、なんつーか、空気がだな」
友「ヘタレが言いそうなことだよねー」
男「おまえは本当、容赦ねぇのな」
三度目のキスは唇を擦り合わせるようにし、四度目のキスでは舌を絡ませた。
そうして回数を重ねるごとに、もっともっと相手が欲しくなる。
姉「弟、弟っ……」
弟「んんっ、姉ちゃんっ……」
あたしたちは無我夢中でキスを繰り返した。
姉「たくさん、キスしちゃったわね」
弟「う、うん……」
目が合う。弟は顔を赤くしている。
そんな顔を見ると、またキスしたくなってくる。
姉「好きよ、弟……」
弟「僕も姉ちゃんが……好き、なんだと思う」
まさか、あのキスが原因でこんなことになるなんて。
それからもう一度キスをし、二人で夕飯の支度をした。
今までにもやってきたことだけれど、今まで以上に幸せを感じた。
そして、二人で夕食を食べる。
弟「うん、今日も美味しい」
姉「きっと二人で作ったからよ、ふふ」
そう言って、にっこりと笑い合う。
こうしてあたしたちは恋愛関係になった。
まさかこんな日が来るなんて、昨日まで夢にも思わなかった。
表だって言える関係ではないだろう。
でも、あたしたちは恋をしてしまった。姉弟だとか、そういったことを関係なしに。
これから、どんな日々があたしたちを待っているのだろう。
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