俺「母さんの作るご飯がまずすぎて妹が死んだので旅に出ます」-第2章-
- 2012/09/12
- 18:55
俺「母さんの作るご飯がまずすぎて妹が死んだので旅に出ます」-第2章-
115: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 00:32:52.23
ID:SDt9HwHE0
K「クサオ、起きてるか」
俺(もう眠いから寝てるふりしよう)
K「ふぅ・・・なぁ、聞こえてるのか?」
妹「私?」
K「一応信じるけどよ」
妹「うん」
K「やっぱ、俺には聞こえねぇよ。兄ちゃんに嘘ついてごめんな」
妹「・・・そう」
俺(!?)
※最初から読む
⇒俺「母さんの作るご飯がまずすぎて妹が死んだので旅に出ます」
158: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 18:24:57.58
ID:SDt9HwHE0
――――――――――――――――――――――――
翌朝。
俺「んん・・・」
妹「おはよう」
俺「うん・・・あ、K・・・K!?」
妹「いるよ」
俺「あぁ、本当だ・・・毛布で見えなかった」
妹「昨日寝てなかったからぐっすり寝てる」
俺「だな。はぁ、バイク売っちゃったのかー」
妹「いくらぐらいになったんだろう」
俺「うん。なんか聞きづらいや。そんなに大事にしてなかったならいいけど」
妹「・・・」
俺「妹?」
妹「何?」
俺「・・・いや」
妹「・・・」
俺(家族以外と会話出来ないって知ってショックなんだ・・・)
K「う、うぅ・・・」
妹「起きたよ」
俺「あ、あぁ」
K「・・・んー・・・うぅ」
俺「・・・やっぱ起きてない。なんか苦しそうだけど変な夢でも見てるのかな」
妹「なんか兄より気苦労多そうだしね」
俺「否定出来ないな」
K「あぁー・・・っく」
俺「K?」
K「・・・」
俺「起きた?」
K「・・・ああ」
159: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 18:26:40.47
ID:SDt9HwHE0
妹「・・・」
俺「うなされてたよ」
K「・・・そうだな」
俺「何の夢見てたの?」
K「・・・いや。夢じゃない」
俺「じゃあ何だよ」
K「違うんだ。頭が痛くてよ」
俺「頭痛いの? 大丈夫?」
K「・・・ッチ。残念ながら。どうも風邪とかじゃない気がする」
俺「・・・」
K「ああ、機嫌悪いように見えるか? すまんな、マジで痛ぇんだ」
俺「外、出てくる」
K「ははっ、そんな顔すんな。大方寝不足か仕事無くしたストレスだ」
妹「・・・」
バタン。
朝の外気は凍るように冷たかった。
俺「・・・はぁ。Kとも妹とも気まずくなっちゃったなー・・・。Kはなんで妹に本当のこと言ったんだろう。はぁ・・・ひどい話だ」
ガチャ。
俺「K?」
K「俺が出てきちゃ迷惑か? はは、外の空気ぐらい好きに吸わせろ」
俺「こう見えても独りで考え事したい時だってあるんだよ」
K「お前って本当馬鹿だもんな。いいんじゃね? その習慣」
俺「うるさいな」
K「うーん。ちっと楽になったな。中の空気が悪かったのかも知れん」
俺「あぁ、死体・・・」
K「・・・まぁ、妹優先しろよ。俺は余所者だ」
俺「ごめん」
K「・・・いい、いい。だいたいお前が何とも無いってのなら、俺もそのうち慣れるだろ。ごほっ」
俺「やっぱり風邪じゃない?」
161: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 18:28:08.61
ID:SDt9HwHE0
K「煙草が効いてんのかな。臭いを紛らわす為につい吸いすぎちまう」
俺「煙草か・・・俺も吸おうかな」
K「ああ、そういや吸ってないんだったな。どうも薬中のイメージがあって。本当のお前って割と丈夫だよな」
俺「どうだろう。比べる相手が少ないからわからないや」
K、煙草に火を着ける。遠くを見ながら。
俺「・・・1本貰っていい?」
K「・・・ぷっ。いいよ、吸えよ」
俺「ありがとう」
K「ほらよ、くわえて吸い込まないと火着かないぞ」
俺「うん」
K「・・・」
俺「ふぅ・・・」
K「あら、むせなかったな」
俺「見様見真似」
K「へー」
俺「煙草の臭いにも慣れないと」
K「・・・」
俺「・・・」
K「次から自分で買えよな?」
俺「あは」
168: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 19:42:18.48
ID:SDt9HwHE0
―――――――――――――――――
妹「兄」
俺「ん?」
妹「いつからヒゲ生えるようになった?」
俺「あぁ・・・結構濃くなったんだなぁ。ちょっと前まで産毛だったんだけど」
妹「無精髭伸びてるとだいぶおっさん臭くなるね」
俺「やだな」
妹「なんか違う人見てるみたい」
俺「今度は髭剃りか・・・でも髭ってどうやって剃るんだろ。ちょっと痛そうだな」
妹「髭剃りって切れ味よさそうだしね。あ、でもさ、でもさ」
俺「うん?」
妹「逆に髭生やしてるほうが人からバレにくいんじゃない?」
俺「え、そんなに違う?」
妹「うーん、全くってほどじゃないけど、歳がかなり上に見える」
俺「よくわからないな」
妹「ニュースでやられた写真はなんか結構子供って感じだったじゃん。だから印象違うと思う」
俺「そうかー。まぁ、利用出来るならするに越したこと無いな」
妹「うんうん」
ガチャ。
K「ただいま・・・」
俺「おかえり」
K「今日は結構稼いだぜ・・・」
俺「ご飯食う?」
K「の前に水を大量にくれ・・・」
俺「はい」
ペットボトルの水を冷蔵庫から出して手渡す。
妹「・・・」
169: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 19:44:52.84
ID:SDt9HwHE0
K「ふぅ、サンキュー」
俺「走って来たの?」
K「いや。口の中がどうもな」
俺「ふーん。出張ホストってどういう仕事するの?」
K「あー・・・うん。お前馬鹿?」
俺「知らないもんは知らないよ」
K「妹の前で言っていいの?」
俺「言っちゃいけないようなことなのか」
K「そういうことだ。特に2丁目絡みのは」
俺「そんなに危ない仕事なんだ・・・」
K「・・・まぁ、別の意味でな・・・それより金だ。ほら」
俺「8千円!」
K「疲れたぜ」
俺「なぁ、K・・・」
K「あ?」
俺「Kはなんで俺達にこんなによくしてくれるの?」
K「ガキにはわからんか。・・・俺もガキだが。受けた恩恵の分は働く。それだけだ」
俺「でも俺は・・・俺は・・・働いてないし」
K「・・・運ってやつだろ。俺が追い込まれた時、ここに住んでたのがたまたまお前だった。お前が主人だった」
俺「だけど、いいの?」
K「いい訳ねぇだろ。働けよ」
俺「・・・」
K「そうすりゃ俺とお前でもっと贅沢出来る。あぁ、妹も入れて3人でだ」
俺「そうだね」
K「すまんな。一応探してはみたんだけどよ、お前にも出来る仕事。だがコネは使い尽くしちまった」
170: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 19:46:07.68
ID:SDt9HwHE0
俺「・・・何馬鹿なことやってるんだろう」
K「は?」
俺「自分の問題は自分で解決するって決めて家出したのに」
K「・・・ふっ、ふふ。ああそう」
俺「千円、貰うね」
K「どこ行くんだ」
俺「履歴書買って来る。それと写真撮る」
K「お、おい。指名手配されてんだろ?」
俺「違うよ。ただの捜索願い」
K「どっちにしろ情報流されたらアウトだろうが。俺も関与したとかでタダじゃ済まなくなる」
俺「大丈夫だって。半年近くもこんな生活してるんだから、それなりにわきまえてる。行くぞ、妹」
妹「ほい」
K「へっ・・・マジ頼りねぇ」
その直後、夜11時。
妹「兄」
俺「おう、兄だ」
妹「気付いてるよね」
俺「何が?」
妹「私がKと喋れないの」
俺「あ・・・」
妹「なんでだと思う?」
俺「なんでって・・・」
妹「人見知り、じゃないよ。先に言っとくけど」
俺「・・・うん」
妹「あは、やっぱり気付いてた」
172: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 19:47:33.58
ID:SDt9HwHE0
俺「実はさ、あの時起きてたんだ。Kが妹に打ち明けた時」
妹「そうなんだ。それは知らなかった」
俺「俺の目を盗んで言うんだから、多分本当なんだろう」
妹「そうだろうね」
俺「生きてると死んでるの本当の違いってこれなんじゃないかな・・・」
妹「喋れるかどうか?」
俺「うん・・・Kの言い方から察するに、俺と妹がこうして喋ってるのも、異常なことなんだと思う」
妹「そっか・・・」
俺「なぁ妹」
妹「はい」
俺「妹は本当にいるよね?」
妹「まぁ」
俺「あれから時々思うんだ。これ全部俺の夢なんじゃないかって」
妹「ほっぺたつねってみれば?」
俺「そうじゃなくて、俺1人がただ、妹が死んだのを受け入れられてないだけで、これ全部幻で・・・」
妹「・・・」
俺「本当は妹は喋ってなんかなくて、俺が勝手に1人芝居してるだけなんじゃないかって・・・」
妹「・・・」
俺「妹?」
妹「かもね」
俺「・・・だとしたら、異常なのは母さん達だけじゃないよ」
妹「私はちゃんと私が喋ってるって言えるよ。兄は納得いかない?」
俺「信じたいよ」
173: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 19:50:16.86
ID:SDt9HwHE0
妹「じゃあ、私だけが知ってることを教えたら納得いく? 幻だったら兄の知らないことまでは聞こえないでしょ」
俺「あー・・・」
妹「ちょっと立ち止まって」
俺「うん」
妹「えっとね。ちょっと待って」
俺「うん・・・」
妹「後ろから歩いて来てる人は、ベージュのコートを着てて、黒い手袋をしてる。で、シャネルのバッグを肩にかけてる」
俺「シャネル?」
女が追い抜いていく。
妹「あれがシャネル」
俺「おお」
妹「おお?」
俺「納得」
妹「よかったね」
俺「よかった。俺おかしくなかった」
妹「リュックに腐乱死体入れて歩いてるのはおかしいけどね」
俺「こいつ。冷蔵庫入れるぞ」
妹「ごめんごめん」
174: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/01/28(金) 19:50:35.31
ID:npXxIa+P0
捜索願いってどういう事?
アリバイ作り?
馬鹿ですまん
177: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 20:16:57.70
ID:SDt9HwHE0
>>174
誰にも伝わってなかったらやだから説明しちゃうわ。
「捜索願い」ってのは兄の憶測である部分が大きい。
「行方不明の兄妹」としてニュースで顔さらされて以来、人目を気にするようになった。
誰かの親切心で所在が暴かれたら妹の死体が露見するから表の世界がより遠くなった。
179: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 20:27:04.87
ID:SDt9HwHE0
ちょっと休みたい。明日休みだからもしかしたら日中ガッツリ書けるかも。
保守頑張ってくれてた人達本当ありがとう。特にvWH8Nw4u0
181: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/01/28(金) 20:37:40.51
ID:9s6XSfAj0
戻ってきたらもう居ないとか。とりあえずおつおつ
183: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 20:52:08.92
ID:SDt9HwHE0
>>181
居ることは居るよ。雑談は避けるけど質問とかには極力答えたい。
188: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/01/28(金) 21:47:27.02
ID:xJ/UuNpl0
むしろ中途半端なとこで
いちいち割り込んだ質問で白けるのも辛いんだがな
190: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 21:49:26.41
ID:SDt9HwHE0
>>188
そっか。なら終わってからにしよう。
194: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 22:55:37.38
ID:SDt9HwHE0
――――――――――――
ある日の夕方。帰り道。
妹「やっと決まったね」
俺「うん・・・なんか色々不安だけど」
妹「あはは、仕事が無いままずっと行くほうが不安だよ」
俺「そう考えるしか無いか」
妹「崖っぷちなのは最初からだしね」
俺「そうだな。結局住所とか名前適当に書いちゃったけど、ちゃんと覚えたほうがいいのかな」
妹「出来ればそのほうがいいんじゃん? せめて名前はね」
俺「不意に本名言っちゃったらここまでの苦労がパーだもんな」
妹「うん。あーあ、なんか本当に指名手配されてるみたいな気分」
俺「とは言え、俺実質犯罪者だし・・・」
妹「あれは○薬とは知らないでやってたようなもんじゃん」
俺「いや。死体遺棄のほう」
妹「そっか」
俺「Kは今日仕事なのかな。早く知らせたい」
妹「うんうん。きっと喜ぶよね」
俺「あ・・・」
妹「ん?」
俺「見て。うちの前に止まってる車」
妹「あ・・・」
俺「ヤクザのだ」
妹「どうする?」
俺「なんか、やばそうな気がする」
妹「え・・・?」
俺「あ、原付無くなってる」
妹「どういうこと・・・」
俺「・・・Kが心配だ」
妹「気をつけてよ」
196: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 22:57:45.39
ID:SDt9HwHE0
プレハブ小屋に慎重に近づく。
ホームレスに紹介された男が車の窓を開けた。
ヤクザ「よ」
俺「・・・」
ヤクザ「挨拶」
俺「お疲れ様です」
ヤクザ「なんで来たかわかるよな」
俺「・・・」
ヤクザ「お前仕事サボって何してた」
俺「サボってたっていうか・・・」
ヤクザ「黙ってりゃいいと思ったのか」
俺「そういう訳じゃ・・・」
ヤクザ「お前んとこの奴捕まったよな。リーダー」
俺「はい」
ヤクザ「それからお前どうしてた?」
俺「その・・・」
ヤクザ「タダで住んでたよな」
俺「・・・」
ヤクザ「大人の世界ではそういうの通らねーの」
俺「すいません」
ヤクザ「まぁいいけどよ。俺も鬼じゃねーから」
俺「ありがとうございます」
ヤクザ「鍵」
窓から手を出しながら。
俺「え・・・」
ヤクザ「小屋の鍵」
俺「・・・」
197: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 22:58:57.58
ID:SDt9HwHE0
よくわからないまま鍵を取り出す。
ヤクザが素早く奪い取る。
ヤクザ「何だその不服そうな顔」
俺「えっと・・・入れないんですけど」
ヤクザ「アホか? もうここはお前ん家じゃねーだろ」
俺「あ・・・」
ヤクザ「ったく、クソみてぇに汚しやがってよ。人が善意で貸してやったのに」
俺「・・・」
ヤクザ「まぁそういうことだから。とりあえずお前にやれる仕事は今は無い」
俺「はい・・・」
ヤクザ「今までご苦労さん。カクの奴によろしく言っとけ」
俺「あの」
ヤクザ「何だ」
俺「テレビ・・・買ったんですけど・・・」
ヤクザ「ああ、返せって?」
俺「・・・」
ヤクザ、おもむろに車を降りる。
ヤクザ「お前が汚した部屋誰が掃除すんだ?」
俺「・・・」
ヤクザ「あのテレビ売ったらクリーニング代になるか?」
俺「・・・」
ヤクザ「お前K匿ってたよな」
俺「あ・・・」
ヤクザ「どうなんだ?」
俺「か、帰ったら逮捕されるから・・・」
ヤクザ「それで?」
198: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 23:00:15.33
ID:SDt9HwHE0
俺「しばらく泊めてって言われて・・・」
ヤクザ「だよな。まぁいい。一応聞いただけだ。念の為な」
俺「Kは・・・?」
ヤクザ「あいつが仲間売ったんじゃねーかって言ってる奴がいてな。今尋問中だ」
俺「・・・」
ヤクザ「そのリュック貸せ」
俺「なんでですか?」
ヤクザ「貸せ」
俺「何するんですか・・・?」
ヤクザ「貸せ」
俺「・・・妹・・・」
妹「・・・」
ヤクザ、死体の入ったリュックを取り上げ、地面に落とす。
俺「待って!」
思い切り踏みつけた。ベキッ。
骨の折れる音。
どす黒い液体が噴き出る。染み出る。
俺「ああ・・・!」
ヤクザ「妹さん、気の毒にな。お前が筋を通さなかったばっかりに」
俺「あ・・・あぁ・・・」
涙。膝の力が抜ける。
ヤクザ「それだけ。あとはまぁ頑張れよ」
俺「うっ・・・」
車ごと去っていくヤクザ。
リュックを中心に液溜まりが広がっていく。
俺「うう・・・」
抱え上げ、抱き締めた。
俺「妹・・・」
妹「・・・」
208: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 23:54:22.44
ID:SDt9HwHE0
――――――――――――――――
5年後。深夜4時。鉄工場にて。
工場長「メル。終わり」
俺「・・・」
工場長「終わりだ」
俺「・・・ああ」
機械の電源を切り、持ち場を片付ける。
A「あああー、つ、か、れ、た。な?」
B「死ねる」
工場長「みんな明日寝坊すんなよ」
A「明日っつーか、3時間後なんすけどね」
B「それ言わないで・・・」
社員の何人かは鉄パイプの山の上で眠っている。
工場長「ここで寝てもいいけど風邪ひくなよお前ら」
俺「お疲れ」
工場長「おう。お疲れ。・・・大丈夫か?」
俺「何が」
工場長「顔が死んでる」
俺「誰だって死ぬよ。1日で20時間以上も拘束されりゃ」
工場長「まぁこんだけ忙しいのは今週だけだ。たまたま仕事がぶつかっただけでさ」
俺「ああ」
工場長「あのさぁー・・・そういうのやめろよ」
俺「何」
工場長「大変なのはみんな同じなんだよ。俺も死にそうなんだよ。でもそういう態度の奴がいるとみんな気分悪くなるんだよ」
俺「・・・」
210: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 23:55:42.23
ID:SDt9HwHE0
工場長「・・・な。今週だけだから。来週には落ち着くからもうちょっと頑張ろうぜ」
俺「心配要らない。疲れてはいるけど暗い気分ではないから」
工場長「はぁ・・・ちょっとお前来いよ」
俺「寝る」
工場長「だからそういうのがムカつくんだって。あ、みんなもう帰っていいよ。おやすみー。おい、メル!」
俺「何だ」
工場長「いい加減にしろよ。俺だって本当はやってらんねぇんだよ。でも立場的にお前みたいにやる訳いかねぇんだよ」
俺「だろうな」
工場長「ぶっ飛ばすぞ?」
俺「・・・」
工場長「・・・」
俺「ごめん・・・。そうだな。みんなで焼肉行く日のことでも考えて元気出すよ」
工場長「そうだよ。この時期終わったら焼肉だよ。カンパーイ! って」
俺「っはは。ああ。まぁ焼肉の前に明日があるから、もう寝るよ」
工場長「おう。早く寝ろよ。また明日な」
俺「おやすみ」
社員寮、4畳の1人部屋。布団の脇に細切れの骨と黒い液体の満ちたペットボトル。
俺「・・・」
横向きに倒れ込み、ペットボトルに両手を伸ばす。見つめて。
俺「俺、まだ生きてるぞ・・・」
妹「・・・」
俺「今日、外部の運転手が言ってたんだ。過労死ってのは予兆が無い。疲れ果てて眠りにつくと、そのまま目を覚まさないんだって」
妹「・・・」
俺「寝るのが怖いよ。命って何だ?」
妹「・・・」
俺「死って何だ? お前はいつか気楽だって言ってたけど、この苦しみの先に死があるのなら、俺は到底耐えられない」
211: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 23:56:30.84
ID:SDt9HwHE0
妹「・・・」
俺「苦しかったろう・・・怖かったろう・・・」
妹「・・・」
俺「・・・くそ・・・ちくしょう・・・! だから母さんが許せないんだ」
妹「・・・」
俺「まだ13歳だったお前に、こんな苦しみを味わわせたあの女が」
妹「・・・兄」
俺「何だ?」
妹「明日も仕事?」
俺「・・・ああ」
妹「大変だね。でも頑張って。私はここにいることしか出来ないけど、待ってるから」
俺「・・・ありがとう」
妹「こちらこそ」
俺「じゃあな」
妹「うん。おやすみ」
212: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 23:57:29.48
ID:SDt9HwHE0
そろそろガチで寝るわ。起きてご飯食ったら続き書く。おやすみ
※続きを読む
俺「母さんの作るご飯がまずすぎて妹が死んだので旅に出ます」
俺「母さんの作るご飯がまずすぎて妹が死んだので旅に出ます」-第2章-
⇒俺「母さんの作るご飯がまずすぎて妹が死んだので旅に出ます」-第3章-
俺「母さんの作るご飯がまずすぎて妹が死んだので旅に出ます」-最終章-
僕は妹に恋をする プレミアム・エディション
115: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 00:32:52.23
ID:SDt9HwHE0
K「クサオ、起きてるか」
俺(もう眠いから寝てるふりしよう)
K「ふぅ・・・なぁ、聞こえてるのか?」
妹「私?」
K「一応信じるけどよ」
妹「うん」
K「やっぱ、俺には聞こえねぇよ。兄ちゃんに嘘ついてごめんな」
妹「・・・そう」
俺(!?)
※最初から読む
⇒俺「母さんの作るご飯がまずすぎて妹が死んだので旅に出ます」
158: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 18:24:57.58
ID:SDt9HwHE0
――――――――――――――――――――――――
翌朝。
俺「んん・・・」
妹「おはよう」
俺「うん・・・あ、K・・・K!?」
妹「いるよ」
俺「あぁ、本当だ・・・毛布で見えなかった」
妹「昨日寝てなかったからぐっすり寝てる」
俺「だな。はぁ、バイク売っちゃったのかー」
妹「いくらぐらいになったんだろう」
俺「うん。なんか聞きづらいや。そんなに大事にしてなかったならいいけど」
妹「・・・」
俺「妹?」
妹「何?」
俺「・・・いや」
妹「・・・」
俺(家族以外と会話出来ないって知ってショックなんだ・・・)
K「う、うぅ・・・」
妹「起きたよ」
俺「あ、あぁ」
K「・・・んー・・・うぅ」
俺「・・・やっぱ起きてない。なんか苦しそうだけど変な夢でも見てるのかな」
妹「なんか兄より気苦労多そうだしね」
俺「否定出来ないな」
K「あぁー・・・っく」
俺「K?」
K「・・・」
俺「起きた?」
K「・・・ああ」
159: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 18:26:40.47
ID:SDt9HwHE0
妹「・・・」
俺「うなされてたよ」
K「・・・そうだな」
俺「何の夢見てたの?」
K「・・・いや。夢じゃない」
俺「じゃあ何だよ」
K「違うんだ。頭が痛くてよ」
俺「頭痛いの? 大丈夫?」
K「・・・ッチ。残念ながら。どうも風邪とかじゃない気がする」
俺「・・・」
K「ああ、機嫌悪いように見えるか? すまんな、マジで痛ぇんだ」
俺「外、出てくる」
K「ははっ、そんな顔すんな。大方寝不足か仕事無くしたストレスだ」
妹「・・・」
バタン。
朝の外気は凍るように冷たかった。
俺「・・・はぁ。Kとも妹とも気まずくなっちゃったなー・・・。Kはなんで妹に本当のこと言ったんだろう。はぁ・・・ひどい話だ」
ガチャ。
俺「K?」
K「俺が出てきちゃ迷惑か? はは、外の空気ぐらい好きに吸わせろ」
俺「こう見えても独りで考え事したい時だってあるんだよ」
K「お前って本当馬鹿だもんな。いいんじゃね? その習慣」
俺「うるさいな」
K「うーん。ちっと楽になったな。中の空気が悪かったのかも知れん」
俺「あぁ、死体・・・」
K「・・・まぁ、妹優先しろよ。俺は余所者だ」
俺「ごめん」
K「・・・いい、いい。だいたいお前が何とも無いってのなら、俺もそのうち慣れるだろ。ごほっ」
俺「やっぱり風邪じゃない?」
161: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 18:28:08.61
ID:SDt9HwHE0
K「煙草が効いてんのかな。臭いを紛らわす為につい吸いすぎちまう」
俺「煙草か・・・俺も吸おうかな」
K「ああ、そういや吸ってないんだったな。どうも薬中のイメージがあって。本当のお前って割と丈夫だよな」
俺「どうだろう。比べる相手が少ないからわからないや」
K、煙草に火を着ける。遠くを見ながら。
俺「・・・1本貰っていい?」
K「・・・ぷっ。いいよ、吸えよ」
俺「ありがとう」
K「ほらよ、くわえて吸い込まないと火着かないぞ」
俺「うん」
K「・・・」
俺「ふぅ・・・」
K「あら、むせなかったな」
俺「見様見真似」
K「へー」
俺「煙草の臭いにも慣れないと」
K「・・・」
俺「・・・」
K「次から自分で買えよな?」
俺「あは」
168: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 19:42:18.48
ID:SDt9HwHE0
―――――――――――――――――
妹「兄」
俺「ん?」
妹「いつからヒゲ生えるようになった?」
俺「あぁ・・・結構濃くなったんだなぁ。ちょっと前まで産毛だったんだけど」
妹「無精髭伸びてるとだいぶおっさん臭くなるね」
俺「やだな」
妹「なんか違う人見てるみたい」
俺「今度は髭剃りか・・・でも髭ってどうやって剃るんだろ。ちょっと痛そうだな」
妹「髭剃りって切れ味よさそうだしね。あ、でもさ、でもさ」
俺「うん?」
妹「逆に髭生やしてるほうが人からバレにくいんじゃない?」
俺「え、そんなに違う?」
妹「うーん、全くってほどじゃないけど、歳がかなり上に見える」
俺「よくわからないな」
妹「ニュースでやられた写真はなんか結構子供って感じだったじゃん。だから印象違うと思う」
俺「そうかー。まぁ、利用出来るならするに越したこと無いな」
妹「うんうん」
ガチャ。
K「ただいま・・・」
俺「おかえり」
K「今日は結構稼いだぜ・・・」
俺「ご飯食う?」
K「の前に水を大量にくれ・・・」
俺「はい」
ペットボトルの水を冷蔵庫から出して手渡す。
妹「・・・」
169: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 19:44:52.84
ID:SDt9HwHE0
K「ふぅ、サンキュー」
俺「走って来たの?」
K「いや。口の中がどうもな」
俺「ふーん。出張ホストってどういう仕事するの?」
K「あー・・・うん。お前馬鹿?」
俺「知らないもんは知らないよ」
K「妹の前で言っていいの?」
俺「言っちゃいけないようなことなのか」
K「そういうことだ。特に2丁目絡みのは」
俺「そんなに危ない仕事なんだ・・・」
K「・・・まぁ、別の意味でな・・・それより金だ。ほら」
俺「8千円!」
K「疲れたぜ」
俺「なぁ、K・・・」
K「あ?」
俺「Kはなんで俺達にこんなによくしてくれるの?」
K「ガキにはわからんか。・・・俺もガキだが。受けた恩恵の分は働く。それだけだ」
俺「でも俺は・・・俺は・・・働いてないし」
K「・・・運ってやつだろ。俺が追い込まれた時、ここに住んでたのがたまたまお前だった。お前が主人だった」
俺「だけど、いいの?」
K「いい訳ねぇだろ。働けよ」
俺「・・・」
K「そうすりゃ俺とお前でもっと贅沢出来る。あぁ、妹も入れて3人でだ」
俺「そうだね」
K「すまんな。一応探してはみたんだけどよ、お前にも出来る仕事。だがコネは使い尽くしちまった」
170: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 19:46:07.68
ID:SDt9HwHE0
俺「・・・何馬鹿なことやってるんだろう」
K「は?」
俺「自分の問題は自分で解決するって決めて家出したのに」
K「・・・ふっ、ふふ。ああそう」
俺「千円、貰うね」
K「どこ行くんだ」
俺「履歴書買って来る。それと写真撮る」
K「お、おい。指名手配されてんだろ?」
俺「違うよ。ただの捜索願い」
K「どっちにしろ情報流されたらアウトだろうが。俺も関与したとかでタダじゃ済まなくなる」
俺「大丈夫だって。半年近くもこんな生活してるんだから、それなりにわきまえてる。行くぞ、妹」
妹「ほい」
K「へっ・・・マジ頼りねぇ」
その直後、夜11時。
妹「兄」
俺「おう、兄だ」
妹「気付いてるよね」
俺「何が?」
妹「私がKと喋れないの」
俺「あ・・・」
妹「なんでだと思う?」
俺「なんでって・・・」
妹「人見知り、じゃないよ。先に言っとくけど」
俺「・・・うん」
妹「あは、やっぱり気付いてた」
172: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 19:47:33.58
ID:SDt9HwHE0
俺「実はさ、あの時起きてたんだ。Kが妹に打ち明けた時」
妹「そうなんだ。それは知らなかった」
俺「俺の目を盗んで言うんだから、多分本当なんだろう」
妹「そうだろうね」
俺「生きてると死んでるの本当の違いってこれなんじゃないかな・・・」
妹「喋れるかどうか?」
俺「うん・・・Kの言い方から察するに、俺と妹がこうして喋ってるのも、異常なことなんだと思う」
妹「そっか・・・」
俺「なぁ妹」
妹「はい」
俺「妹は本当にいるよね?」
妹「まぁ」
俺「あれから時々思うんだ。これ全部俺の夢なんじゃないかって」
妹「ほっぺたつねってみれば?」
俺「そうじゃなくて、俺1人がただ、妹が死んだのを受け入れられてないだけで、これ全部幻で・・・」
妹「・・・」
俺「本当は妹は喋ってなんかなくて、俺が勝手に1人芝居してるだけなんじゃないかって・・・」
妹「・・・」
俺「妹?」
妹「かもね」
俺「・・・だとしたら、異常なのは母さん達だけじゃないよ」
妹「私はちゃんと私が喋ってるって言えるよ。兄は納得いかない?」
俺「信じたいよ」
173: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 19:50:16.86
ID:SDt9HwHE0
妹「じゃあ、私だけが知ってることを教えたら納得いく? 幻だったら兄の知らないことまでは聞こえないでしょ」
俺「あー・・・」
妹「ちょっと立ち止まって」
俺「うん」
妹「えっとね。ちょっと待って」
俺「うん・・・」
妹「後ろから歩いて来てる人は、ベージュのコートを着てて、黒い手袋をしてる。で、シャネルのバッグを肩にかけてる」
俺「シャネル?」
女が追い抜いていく。
妹「あれがシャネル」
俺「おお」
妹「おお?」
俺「納得」
妹「よかったね」
俺「よかった。俺おかしくなかった」
妹「リュックに腐乱死体入れて歩いてるのはおかしいけどね」
俺「こいつ。冷蔵庫入れるぞ」
妹「ごめんごめん」
174: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/01/28(金) 19:50:35.31
ID:npXxIa+P0
捜索願いってどういう事?
アリバイ作り?
馬鹿ですまん
177: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 20:16:57.70
ID:SDt9HwHE0
>>174
誰にも伝わってなかったらやだから説明しちゃうわ。
「捜索願い」ってのは兄の憶測である部分が大きい。
「行方不明の兄妹」としてニュースで顔さらされて以来、人目を気にするようになった。
誰かの親切心で所在が暴かれたら妹の死体が露見するから表の世界がより遠くなった。
179: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 20:27:04.87
ID:SDt9HwHE0
ちょっと休みたい。明日休みだからもしかしたら日中ガッツリ書けるかも。
保守頑張ってくれてた人達本当ありがとう。特にvWH8Nw4u0
181: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/01/28(金) 20:37:40.51
ID:9s6XSfAj0
戻ってきたらもう居ないとか。とりあえずおつおつ
183: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 20:52:08.92
ID:SDt9HwHE0
>>181
居ることは居るよ。雑談は避けるけど質問とかには極力答えたい。
188: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/01/28(金) 21:47:27.02
ID:xJ/UuNpl0
むしろ中途半端なとこで
いちいち割り込んだ質問で白けるのも辛いんだがな
190: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 21:49:26.41
ID:SDt9HwHE0
>>188
そっか。なら終わってからにしよう。
194: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 22:55:37.38
ID:SDt9HwHE0
――――――――――――
ある日の夕方。帰り道。
妹「やっと決まったね」
俺「うん・・・なんか色々不安だけど」
妹「あはは、仕事が無いままずっと行くほうが不安だよ」
俺「そう考えるしか無いか」
妹「崖っぷちなのは最初からだしね」
俺「そうだな。結局住所とか名前適当に書いちゃったけど、ちゃんと覚えたほうがいいのかな」
妹「出来ればそのほうがいいんじゃん? せめて名前はね」
俺「不意に本名言っちゃったらここまでの苦労がパーだもんな」
妹「うん。あーあ、なんか本当に指名手配されてるみたいな気分」
俺「とは言え、俺実質犯罪者だし・・・」
妹「あれは○薬とは知らないでやってたようなもんじゃん」
俺「いや。死体遺棄のほう」
妹「そっか」
俺「Kは今日仕事なのかな。早く知らせたい」
妹「うんうん。きっと喜ぶよね」
俺「あ・・・」
妹「ん?」
俺「見て。うちの前に止まってる車」
妹「あ・・・」
俺「ヤクザのだ」
妹「どうする?」
俺「なんか、やばそうな気がする」
妹「え・・・?」
俺「あ、原付無くなってる」
妹「どういうこと・・・」
俺「・・・Kが心配だ」
妹「気をつけてよ」
196: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 22:57:45.39
ID:SDt9HwHE0
プレハブ小屋に慎重に近づく。
ホームレスに紹介された男が車の窓を開けた。
ヤクザ「よ」
俺「・・・」
ヤクザ「挨拶」
俺「お疲れ様です」
ヤクザ「なんで来たかわかるよな」
俺「・・・」
ヤクザ「お前仕事サボって何してた」
俺「サボってたっていうか・・・」
ヤクザ「黙ってりゃいいと思ったのか」
俺「そういう訳じゃ・・・」
ヤクザ「お前んとこの奴捕まったよな。リーダー」
俺「はい」
ヤクザ「それからお前どうしてた?」
俺「その・・・」
ヤクザ「タダで住んでたよな」
俺「・・・」
ヤクザ「大人の世界ではそういうの通らねーの」
俺「すいません」
ヤクザ「まぁいいけどよ。俺も鬼じゃねーから」
俺「ありがとうございます」
ヤクザ「鍵」
窓から手を出しながら。
俺「え・・・」
ヤクザ「小屋の鍵」
俺「・・・」
197: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 22:58:57.58
ID:SDt9HwHE0
よくわからないまま鍵を取り出す。
ヤクザが素早く奪い取る。
ヤクザ「何だその不服そうな顔」
俺「えっと・・・入れないんですけど」
ヤクザ「アホか? もうここはお前ん家じゃねーだろ」
俺「あ・・・」
ヤクザ「ったく、クソみてぇに汚しやがってよ。人が善意で貸してやったのに」
俺「・・・」
ヤクザ「まぁそういうことだから。とりあえずお前にやれる仕事は今は無い」
俺「はい・・・」
ヤクザ「今までご苦労さん。カクの奴によろしく言っとけ」
俺「あの」
ヤクザ「何だ」
俺「テレビ・・・買ったんですけど・・・」
ヤクザ「ああ、返せって?」
俺「・・・」
ヤクザ、おもむろに車を降りる。
ヤクザ「お前が汚した部屋誰が掃除すんだ?」
俺「・・・」
ヤクザ「あのテレビ売ったらクリーニング代になるか?」
俺「・・・」
ヤクザ「お前K匿ってたよな」
俺「あ・・・」
ヤクザ「どうなんだ?」
俺「か、帰ったら逮捕されるから・・・」
ヤクザ「それで?」
198: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 23:00:15.33
ID:SDt9HwHE0
俺「しばらく泊めてって言われて・・・」
ヤクザ「だよな。まぁいい。一応聞いただけだ。念の為な」
俺「Kは・・・?」
ヤクザ「あいつが仲間売ったんじゃねーかって言ってる奴がいてな。今尋問中だ」
俺「・・・」
ヤクザ「そのリュック貸せ」
俺「なんでですか?」
ヤクザ「貸せ」
俺「何するんですか・・・?」
ヤクザ「貸せ」
俺「・・・妹・・・」
妹「・・・」
ヤクザ、死体の入ったリュックを取り上げ、地面に落とす。
俺「待って!」
思い切り踏みつけた。ベキッ。
骨の折れる音。
どす黒い液体が噴き出る。染み出る。
俺「ああ・・・!」
ヤクザ「妹さん、気の毒にな。お前が筋を通さなかったばっかりに」
俺「あ・・・あぁ・・・」
涙。膝の力が抜ける。
ヤクザ「それだけ。あとはまぁ頑張れよ」
俺「うっ・・・」
車ごと去っていくヤクザ。
リュックを中心に液溜まりが広がっていく。
俺「うう・・・」
抱え上げ、抱き締めた。
俺「妹・・・」
妹「・・・」
208: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 23:54:22.44
ID:SDt9HwHE0
――――――――――――――――
5年後。深夜4時。鉄工場にて。
工場長「メル。終わり」
俺「・・・」
工場長「終わりだ」
俺「・・・ああ」
機械の電源を切り、持ち場を片付ける。
A「あああー、つ、か、れ、た。な?」
B「死ねる」
工場長「みんな明日寝坊すんなよ」
A「明日っつーか、3時間後なんすけどね」
B「それ言わないで・・・」
社員の何人かは鉄パイプの山の上で眠っている。
工場長「ここで寝てもいいけど風邪ひくなよお前ら」
俺「お疲れ」
工場長「おう。お疲れ。・・・大丈夫か?」
俺「何が」
工場長「顔が死んでる」
俺「誰だって死ぬよ。1日で20時間以上も拘束されりゃ」
工場長「まぁこんだけ忙しいのは今週だけだ。たまたま仕事がぶつかっただけでさ」
俺「ああ」
工場長「あのさぁー・・・そういうのやめろよ」
俺「何」
工場長「大変なのはみんな同じなんだよ。俺も死にそうなんだよ。でもそういう態度の奴がいるとみんな気分悪くなるんだよ」
俺「・・・」
210: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 23:55:42.23
ID:SDt9HwHE0
工場長「・・・な。今週だけだから。来週には落ち着くからもうちょっと頑張ろうぜ」
俺「心配要らない。疲れてはいるけど暗い気分ではないから」
工場長「はぁ・・・ちょっとお前来いよ」
俺「寝る」
工場長「だからそういうのがムカつくんだって。あ、みんなもう帰っていいよ。おやすみー。おい、メル!」
俺「何だ」
工場長「いい加減にしろよ。俺だって本当はやってらんねぇんだよ。でも立場的にお前みたいにやる訳いかねぇんだよ」
俺「だろうな」
工場長「ぶっ飛ばすぞ?」
俺「・・・」
工場長「・・・」
俺「ごめん・・・。そうだな。みんなで焼肉行く日のことでも考えて元気出すよ」
工場長「そうだよ。この時期終わったら焼肉だよ。カンパーイ! って」
俺「っはは。ああ。まぁ焼肉の前に明日があるから、もう寝るよ」
工場長「おう。早く寝ろよ。また明日な」
俺「おやすみ」
社員寮、4畳の1人部屋。布団の脇に細切れの骨と黒い液体の満ちたペットボトル。
俺「・・・」
横向きに倒れ込み、ペットボトルに両手を伸ばす。見つめて。
俺「俺、まだ生きてるぞ・・・」
妹「・・・」
俺「今日、外部の運転手が言ってたんだ。過労死ってのは予兆が無い。疲れ果てて眠りにつくと、そのまま目を覚まさないんだって」
妹「・・・」
俺「寝るのが怖いよ。命って何だ?」
妹「・・・」
俺「死って何だ? お前はいつか気楽だって言ってたけど、この苦しみの先に死があるのなら、俺は到底耐えられない」
211: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 23:56:30.84
ID:SDt9HwHE0
妹「・・・」
俺「苦しかったろう・・・怖かったろう・・・」
妹「・・・」
俺「・・・くそ・・・ちくしょう・・・! だから母さんが許せないんだ」
妹「・・・」
俺「まだ13歳だったお前に、こんな苦しみを味わわせたあの女が」
妹「・・・兄」
俺「何だ?」
妹「明日も仕事?」
俺「・・・ああ」
妹「大変だね。でも頑張って。私はここにいることしか出来ないけど、待ってるから」
俺「・・・ありがとう」
妹「こちらこそ」
俺「じゃあな」
妹「うん。おやすみ」
212: ◆2kGkudiwr6 投稿日:2011/01/28(金) 23:57:29.48
ID:SDt9HwHE0
そろそろガチで寝るわ。起きてご飯食ったら続き書く。おやすみ
※続きを読む
俺「母さんの作るご飯がまずすぎて妹が死んだので旅に出ます」
俺「母さんの作るご飯がまずすぎて妹が死んだので旅に出ます」-第2章-
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