あの日。
あの最後の日。
彼の言葉は私を抉る。
俺『俺は姉さんを解放しに…きた』
私を解放…?
囚われていたというのか。
私は…彼らが心配で…
……あの暗闇に留まったというのか。
……………。
一人で苦しかった、あの孤独な時間。
何も無い、声もでない、世界で、ただずっと…
時の感覚は麻痺し、
今いつなのかも分からず。
初めはどんなことを考えていたのだろう。
いつ、自らの幸せを望むようになってしまったのだろう。
いつも弱い弟と…それにべったりな妹が心配で…
だから…留まることを決意したのではなかったのか…?
嗚呼
ああ、忘れていた。
一人だけの時間が長過ぎて…
人の温もりが恋しくなってしまったのか…。
なんて…格好悪いお姉ちゃんだろう。
なんて……ブラコン過ぎるお姉ちゃんだろうか。
甘えられたのは常に自分だと思っていたのに…
いつの間にか…心の拠り所にしていたなんて…。
そんな事実……今更ながらに気付くなんて。
彼と妹がいる世界に行きたい…。
素直にそう…思ってしまう。
でも──
わたしは…
わたしは…もう…
一度死んでしまった。
肉体がない者は“あの世界”には戻れない。
それが理。
彼らのいる、世界は…
…遠く……どこまでも……手が届かないほど遠いんだ…。
しかし私は…
心に強く決意をして──
姉「じゃあ、さようなら」
最後ぐらいは…カッコイイ姉ちゃんの姿を…。
涙を必死に堪えている彼の姿は…私の心を揺さぶり、
それでも…
それでも私は…笑うんだ。
──“この世界”で一番の笑顔を
あっちの世界は任したよ。
何だかんだで抜けてる父さん…
いつもみんなを見守ってる母さん…
そして…私の可愛い妹…
みんな、よろしくね…。
少女「…世界を閉じます」
少女「ではご武運を」
瞬間──
私の創った世界は消えた。
……………。
既に実体は無く…
ただ真っ白な空間で…彼女は語りかける。
少女「………」
少女「次はあなたの番ですよ」
……え?
少女「今度は…」
少女「今度は見せかけの世界ではなく、
本当の世界に──」
死んだ私が…
…戻れるというの?
少女「でも一つ…残念なことに…」
少女「あなたが築いた記憶は…
新しい肉体を得る時…消えてしまいます」
……そう
それが……
少女「理です」
でもいい…。
姿が変わっても…記憶が無くなっても…
私は彼らのいる世界に…戻りたい。
ただ、それだけ。
少女「…………」
少女「そうですか」
少女「では…あなたに」
少女「幸があらんことを──」
……ああ。
光が……。
光が…強く……。
また私も……
“あの世界”に戻れるのね──
……………。
……………。
姉が消えて、誰もいなくなった世界で…
少女は語る。
少女「………」
少女「もし…」
少女「もし彼が…」
少女「あの屋上の鍵を…ずっと持ち続けていたら──」
少女「その時、奇跡は起きるでしょう」
少女「記憶を…新たな肉体に…詰める事は出来ない」
少女「でも…時を経て…彼と彼女を結びつけた、あの鍵は」
少女「その入れ箱として…十二分に大きい」
少女「…………」
少女「…ふふ…」
少女「私も…つくづく…甘いですね」
少女「………あ」
真っ白な世界にまた黒い隙間が生まれる。
少女「もう、次ですか。
休む時間もありませんね…」
少女「………」
少女「二人がまた…出会えることを祈って──」
………………。
…………。
……。
──十六年後
十六年だ。
あの後、月日は一瞬で流れる。
リハビリに時間がかかった俺…
それをずっと横でささえてくれた妹…
母さんの手術は…見事成功した。
父さんも…海外転勤が終わって…
日本に戻れるようになった。
一人ずつ…世界はかつての頃を取り戻してきて…
俺が家族の元に戻るのも…
そう時間はかからなかった。
いつも妹がそばいたから…。
俺は頑張れたんだ。
でも──
彼女一人だけは今でも欠けている。
そして月日は流れ…
俺は既におっさんへの道を進んでいた。
三十路を越えて…後はただ…衰えていくだけ…。
まだまだ妹とは一緒だが──
そろそろなんとかしないとマズいような…。
俺「なんか無いかね……」
俺はそう一人で呟く。
結婚が出来る訳でもないし…
子供って言ってもなあ…。
妹は今の二人の暮らしに満足してるみたいだけど。
その時──
俺は誰かとぶつかる。
俺「おっ」
?「あっ」
綺麗で透き通った声。
女子高生だろうか…
やばいな…早いとこずらかりたい。
俺「ご、ごめんね」
俺「…大丈夫?」
?「あ、はい…こっちもすみませんでした…」
俺「怪我が無いなら良かった…」
俺「じゃあ…俺行くね?」
?「あ、はい」
顔を見ないで…
早々に立ち去ろう。
話の仕方から恐らく感じのいい子だとは思うけど…
痴漢と間違われても困るし…。
?「………あ」
?「あの!!」
?「……これ落ちましたよっ!!」
え?
過ぎ去ろうとした俺を、
女子高生が呼び止める。
なんか…落としたかな…。
?「えっと……鍵?」
あ。
思い当たる節があって振り返る。
その瞬間──
何かが、はじけた。
女子高生「あ、……あれ……なんで……記憶…?」
女子高生「……俺………?」
………あ。
…う……あ…
…ま、間違いない…
……姿は変わったけど……彼女は…姉さん……だ…。
だから──
俺「………おかえり」
そう言って、俺は彼女を出迎える。
最後の欠片が…揃った。
──二人の止まった時が…また動き始める
~TRUE END~
>>1 良ければ鳥つけていただけませんか?
あと、コレをFlashで効果を付けて
文字を流す と言うのを作成して公開してよろしいでしょうか?
【後日談終】
これで本当に終わり
最後まで読んでくれた人、ありがとうね!
>>867 全然構わないよ!
というか嬉し過ぎる…
その時に、出来れば気付いた誤字は直して頂けると…
間違ったままだと恥ずかしいんで
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