女「分かった?
あなたが起きる前、私はずっと思い出そうとしてる」
女「でも、何も思い出せない…」
女「親が誰なのか、自分の名前は何なのか…
どこで生まれたのか…恋人はいたのか、友人は?」
女「そして…」
女「『何で私はここにいるの?』ってね」
女「……残念だけど、全く思い出せないわ」
男「………そんな馬鹿な……」
女「閉じ込められた部屋」
女「隣で寝ている男」
女「これで今の状況は理解出来た?」
男「手詰まりで……
俺を起こしたってことか…」
女「ご明察」
女「……で」
女「私が左、あなたが右」
男「…なんのことだ……?」
女「さて問題」
女「この部屋には二人だけ、あなたと私」
男「……ああ」
女「ここに二つの鍵があって」
男「おう」
女「二つの鍵穴がある」
男「………」
女「さて、どうすればいいですか?」
男「………入れて回す」
女「正解」
男「し、しかし、何が起こるか分からんぞ?
そのために危険は冒したくない…」
女「………でも」
女「今の状況に甘んじてたら…最終的には…
餓死するしか道は無いと思うけど…」
女「しかも、あなたが急に異常な行動に出るかもしれないし…」
男「………異常な行動?」
女「…レイプとか……」
男「…………」
男「………な」
男「お、おまえみたいなブス、好き好んで襲うかよ!」
女「ひ、ひどーいッ!」
男「うっせ、バーカ。もうしんね。
んじゃ、もう俺先に回すからな」
女「ちょっ、同時にまわ──」
男「よし、ガチャッと…」
女「え?」
女「………な、何コレ……」
男「ん?どうした?」
女「…や、やだ……」
女「……の、のぼって……こない……で」
男「お、おい、どうしたんだよ!」
バンッ
男「うわっ!?!」
女「や……やだ……死にたく…ないよぉ………ゴブェ…」
男「……あ」
男「………ああああ」
男「………なんてことだ………」
ガチャ
大男「よし、ナンバー32」
男「……え?」
大男「貴様が生き残ったみたいだな」
男「ちょっ、ちょっと待って下さい!
あなたは一体誰なんですか!」
大男「………しかし、盛大にぶちまけたもんだな」
男「……な」
大男「お前が殺した訳だ。
まあ、殺さなければ殺される世界。
別にお前は間違っちゃいねえよ、ハハハ」
男「な、何を言ってるんだ!!
鍵を回したら彼女の腹がブチ撒かれて
死んでしまうなんて、俺は知らなかった!!」
大男「まあ、お前は知らなかったのかもな。
だが、その女はどうやら知ってたようだぞ」
男「……そ、そんな馬鹿な話…」
大男「ほれ」
ドサッ
サッ
男「おい!!人の死体になんてことするんだ!!」
大男「いいから激情しないで、
女の尻が踏んでとこ見てみろ」
男「…………?」
男「………紙か……?」
大男「読んでみろよ」
男「い、言われなくたって読むさ!」
男「……『先に鍵を回した方が生き残る』……」
大男「そういうこと」
男「……じゃあ、何で彼女は先に……」
大男「知らね、そんなことは関係ねぇんだよ。
お前が生きて、女が死んだ。
ただ、それだけだ」
男「き、貴様ーー!!!!」
男「って……立てない……?」
大男「次の部屋で生きてみろよ」
大男「そしたら立てるようになるぜ」
男「……お、俺に何をした……?」
大男「はいはい。うるさい野郎には
再度寝てもらいますか…」
男「や、やめ」
ドゴッ
男「…………」
男「………うぅ」
男「こ、ここは?」
ピザ「………すぅすぅ……」
男「今度は逆の立場?」
男「な、何なんだ……
この世界は一体なんなんだ……」
男「……俺は、人を殺してしまったのか…」
男「…………」
男「……く、くそ!!
なんで早まったりしたッ!」
男「こ、こんなことなら……
彼女が回せば良かったのに……」
男「……うぅ……」
男「…………」
男「………ああ…」
男「…………ん?」
男「………紙?」
『隣の男は幼女誘拐殺人事件の犯人』
『現在でも警察には捕まっておらず、
今後も捕まることは無いだろう』
『男のこの嗜好は続いており
今も行方不明の少女が二人ほど監禁されている』
男「……な、何だコレは…」
男「ご丁寧に……写真まで撮ってある……」
『部屋の真ん中にある箱を見て欲しい』
男「………箱?」
男「あ、あれか……」
男「……足は繋がってるが…手を伸ばせば十分届くな……」
男「よいしょっ……」
男「ん」
男「よし!取れた…」
『その箱に入っている凶器で、この男を殺せ』
『さすれば、足の鎖は解き放たれるだろう』
男「な、な……」
男「ま、また俺に人を殺めろと言うのか!?」
男「…………くそっ!」
男「……なんなんだこれは!」
男「誰か、出てこい!」
男「俺に何故こんなことをさせる!!」
『男は起きない』
『だが、もしあなたが起こしたいと思うなら、
箱の底にある注射器を打ってやれば良い』
男「…………」
男「………話を聞くだけ聞いてみるか…」
男「こんな錆び付いたナイフで殺せなんて……」
男「幾らこいつが最低な屑でも俺には出来んぞ…」
男「…………」
男「……と、とりあえず……この凶器は隠しといて…」
男「まずは、この事実が正しいのか聞かないとな…」
男「こ、この注射か…」
男「………大丈夫だろうな…」
男「これが実は毒入りだとか……」
男「………仕方ない…やるか」
プスッ
ピザ「……う!!」
男「………どうだ?」
ピザ「…………」
男「……ま、またなのか……?」
ピザ「……………」
ピザ「………………あ、あれぇ?」
男「よ、よし!!大丈夫か!?
ここがどこか分かるか!!」
ピザ「な、なんなんだお前は……!」
ピザ「ぼ、僕の家じゃないの……か…!」
ピザ「……お、お前!」
ピザ「……か、体が動かないぞ…!!
僕に何をやった!!」
男「ちょっ、ちょっと待て……
俺はやってない……お前を起こしただけだ…」
ピザ「う、嘘をつくな!
その注射器で、僕になんかしたんだろ!」
男「ち、違う!!
これでお前を起こしてやろうと……」
ピザ「うぅ………何で、動けないんだ……。
家で……二人が待ってるというのに…」
男「………すまん。
……………って二人?」
ピザ「い、いや、何でもない……」
男「…………」
男「ちょっと待て……
実はお前に関する資料がここにあるんだ」
ピザ「え?」
男「年齢28歳、職業無職…
大学中退後…親のすねかじり…。
現在は祖父母が住んでいた一軒家で一人暮らし…」
ピザ「…………」
男「そして…」
男「数年前に起きた…連続幼女殺害事件の犯人」
ピザ「ぼ、僕じゃない…。
証拠がどこにあるって言うんだ!!」
男「ほれ」
ピザ「……え?」
男「お前の自宅から…死んだ少女の衣類と髪の毛などが
見つかったらしいぞ…ご丁寧に写真と鑑定付きで…」
ピザ「……そ、そんな…」
男「でだ。
さっき言ってた二人って何だ?」
ピザ「い、いや……その……、
と、友達だよ、友達!家に遊びに来てるんだ」
男「…………」
男「…酒井明菜ちゃんと、佐藤唯ちゃんがか?」
ピザ「………あああ」
男「どうやら、二人とも現在は行方不明らしい…」
男「……それで、この少女の写真も……
ほれ」
ピザ「…………」
男「………何黙ってるんだ…」
ピザ「………うぅ……そ、」
ピザ「そ、それがどうかしたのか!!
僕が、犯人だとして…!
君にこんなことをする権利はありのか!」
男「な…」
ピザ「まさしく人権の侵害だ!!
弁護士を呼べ、お前を訴えてやるからな!」
男「お、お前、言う事に欠いてそれか!」
ピザ「う、うるさいんだよ!
僕は悪くないんだ!悪いのは社会なんだ!
この社会を作ってる政治家達が悪いんだ!!」
ピザ「み、見てろよ!
お前がそうやって僕を見下して……
って──」
男「?」
ピザ「お前の後ろにある凶器は、何だ……?
もしかしてそれで俺を殺すつもりなのか…!」
男「い、いいや待ってくれ!
これは前からあったもんだ。
お前をどうこうするつもりはない」
ピザ「う、うそだ……それで社会に代わって
僕に制裁を下すつもりか…!」
ピザ「や、止めてくれ!僕はまだ死にたくないんだ!
あの子達が死んだのは自業自得なんだ!」
男「じ、自業自得…?
どういうことだ…?」
ピザ「……あ、ああ」
ピザ「あれは、数年前のことだ…」
>>31 ×もしかしてそれで俺を殺すつもりなのか…!
○もしかしてそれで僕を殺すつもりなのか…!
ピザ「僕がいつものようにコンビニで弁当を買って
家に戻ろうとした時…」
ピザ「二人の女の子が…僕の家の前で喋ってたんだ…」
ピザ「僕は……その時、まだ人が怖くて……」
ピザ「早く去ってくれないかなって…隠れて待ってんだ」
ピザ「そ、そしたら……二人の話してる声が聞こえてきて…」
ピザ「曰く、
『ここに住んでるデブの人って引きこもりなんだよ』」
ピザ「『ええ、まじキモイ…。
だからあんなオドオドしてるんだ』」
ピザ「『お母さんが言ってたけど…話しかけられたら
逃げなさいだって。アイツにそんな度胸無いよねー』」
ピザ「『あるわけないよー。引きこもりだよー。
明らかに僕キモイです話せません…って顔じゃん!』」
ピザ「『何それーハハハ』ってね」
ピザ「あんな夜ももう遅いのにだよ…。
人のことを罵ってたんだ。しかも●学生が!」
ピザ「同級生に言われるならまだしも……あんなガキに…」
ピザ「悔しかった。本当に悔しかった……。
そしてそれ以上に、そいつらを殺してやりたかった!」
ピザ「その後は簡単だった…すぐさま力づくで家に押し込み…
頭を打って気絶させ……思うままさせて貰ったさ」
男「………お、お前…」
ピザ「僕が全部悪いっていうのかい!?
あんな時間にうろうろしてる方が問題だよ!
責任が僕にだけあるなんて、思わないで欲しい!」
ピザ「やられる奴にはやられるだけの理由がある!
それがこの社会なんだ!」
男「…………」
ピザ「君は僕の事を哀れで醜い奴だと思ってるだろうよ…。
でもね。僕は今の自分に誇りを持ってるんだ!
今の二人は何でも言う事を聞いてくれる…」
男「もう止めてくれ…」
ピザ「何をやっても許されるんだ!
あの家の中では僕が神、絶対者なんだ!!」
男「………だ…れ」
男「……だまれだまれ」
男「黙れーーッ!!!!!」
ピザ「ひっ!?」
男「何が絶対者だ!何がやられた方に責任があるだ!」
男「自分より弱い者を虐げ、それで良いと思ってるのかッ!」
ピザ「……うぅ……」
ピザ「…く、君には分からないよ、到底理解出来ないんだ」
男「くそったれが!
俺じゃなかったら殺してやるところだ!」
ピザ「…………」
ピザ「………あれ?」
ピザ「……動くぞ」
男「……?」
バンッ
ピザ「よっと!へへ、ざまーみろ!
おまえのナイフ奪ってやったよ!」
男「なっ!動けないんじゃなかったのか…?」
ピザ「残念!今は正にこの通りさ。
足が繋がれてるお前と、五体満足の僕。
さてさて、形勢逆転だ!!」
男「……ッ」
ピザ「よくもさっきは調子こいたこと言ってくれたな!
お前もそうだ!
殺られる奴には殺られる側の責任があるんだよ!」
ピザ「だからこのナイフでお前を殺す!
怨んでくれるなよ!言いたい事言った、
お前の責任だ!」
男「くそっ」
ピザ「オリャー!!!!!」
男「……ッ」
グサッ
ピザ「………」
男「………」
ピザ「……うぇ…??」
男「……きちんと持ってないと
手首返すのは容易だぞ…」
ピザ「そ、そんな馬鹿な……グェ……ビチャ…」
男「………結局は──」
ピザ「………死、にたく……ないよぉ……母さん……グチャ…」
バタッ
男「──こうなってしまうのか…」
男「……………」
男「…………でも」
男「………でも待てよ……」
男「アイツは……
アイツは……社会のゴミみたいな奴だった…」
男「まだ、監禁されていた少女もいた……」
男「今後も警察には捕まらないって……」
男「………もしかしたら…」
男「結果的に…俺が殺して…
良かったんじゃないのか…?」
男「……………」
男「……ハハハ」
男「……ハハハハハ、そうだよ!
殺してやった正解だったじゃないか!」
男「何を俺は躊躇ってたんだ」
男「殺すべき男を殺した……
それに何の罪と良心が痛むって言うんだ!」
男「ははははははははははははは」
ガチャン
男「……あれ」
男「……鎖が取れたぞ…?」
男「もしかして…これで自由?」
男「……なんだ!
歩けるぞ!
こんなに簡単なら早く殺すべきだった!」
男「ドアも開くかな?」
ガチャ
男「あは、開いた」
男「………ん?」
男「なんだろ……この廊下……」
男「一杯部屋が並んでるみたいだぞ…?」
男「少し覗いてみるか…」
男「…………」
男「……な、なんだこれ…」
男「ま、真っ赤だ……」
ピンポンパンポン♪
男「?」
?『さて皆さん、時間になりました』
?『実は制限時間を設けてたんだ。
案外それで爆発しちゃった人が多かったようです』
?『百人いて……一回目で五十…
二回目で十三か……』
?『ちょっと少ないですね』
?『まあ、いいです。続けましょう』
男「な、なんなんだ……?」
?『よく漫画や、映画であるじゃないですか。
サバイバルゲーム』
?『でもね。君たちに殺し合いなんてさせても
こちらは何の得にもないんですよ』
?『だから次の試練。
記憶を取り戻して下さい』
男「……き、記憶?」
?『長い通路をどれでもいいので進んで下さい』
?『すると、突き当たりに壁が』
?『そしてそこに電話があります』
?『ベルが鳴るのですぐに出る』
?『質問が三つ』
?『正解すると頭の爆発はなし』
?『とても簡単な質問です』
?『「はい」か「いいえ」』
?『まずは精神状態を試させて頂きます』
?『では、頑張って下さい』
ピンポンパンポン♪
男「……と、とりあえず歩けばいいのか…」
トコトコトコ
男「…………」
トコトコトコ
男「……まだ着かないのか…」
トコトコトコ
男「………」
トコトコトコ…タッタッタ……
男「も、もしかして、また、制限時間がある、かもっ
急げ!」
タッタッタッタ……
男「……ん?」
タッタタッタタッタ………トコトコ……ピタッ…
男「…………」
男「……壁だ」
男「そして…電話……」
男「…………かかってこないぞ?」
トゥルトゥルトゥルトゥル
男「…うおっ」
男「……と、これを、と、取ればいいんだな…」
ガチャ
男「もしもし…」
?『…………』
男「……あ、あの」
?『あなたは、人を殺した事がありますか?』
男「……(今日のことか…以前のことか??)」
男「は、はい」
?『…………』
?『次』
男「は、ふぅー……」
?『あなたは、生きる価値のある人間ですか?』
男「……(なんだ?完璧に分からなくなったぞ…)」
男「……(ど、どっちだ?)」
男「……(し、しかし、こんな状況にいる以上、
ろくな人間じゃなかったのか、俺は…?)」
男「…い、いいえ」
ドクンドクン
?『…………』
?『次』
男「ッ(た、助かった……)」
?『最後の質問』
男「は、はい」
?『あなたは──』
?『──………娘と妻を見殺しにしましたか?』
男「……………」
男「…はい」
?『…………終了』
?『壁から離れて下さい』
ゴゴゴゴゴゴゴ
男「か、壁が……上がっていく…?」
男「妻と娘か……」
男「………そうだったな」
男「……少しだけ、思い出してきたよ」
男「……で、次はどうすればいいんだ?」
男「この新しく出来た道を進みのか…?」
男「…………ん?」
ピンポンパンポン♪
?『さて、どうやら皆さん終わったようですね』
?『十三人中、正解出来たのは7人。
失敗したのは5人。一人はおかしくなって、
壁まで辿り着きませんでした』
?『ここまでは相当簡単にしたつもりなんですけどね』
?『まあ、7人ですか。ラッキーナンバー。
縁起がいいから良しとしますか──』
?『でも、これからが本当に生き残りなんですよ』
?『今までのは言わば“間引き”
これからが、本当の選択のお時間です』
?『用意はいいですか?』
?『では次を説明致します』
記憶がないはずなのに
ピザは監禁してた女の子のことを覚えてたのか?
>>57 ピザはそもそも死ぬ運命
男が殺さなくても…結局制限時間を越えたら死亡
選ばれた百人ではない
?『過去の断片を取り戻したあなた達7人』
?『ただ、全ては思い出せないように細工がされています』
?『で、次こそ本当に記憶の全てを思い出して貰うわけです』
?『ついでに、正しい選択もして下さいね』
?『まずは新しく出来た道を歩く』
男「………歩く…」
トコトコトコ……
?『すると、いつの間にか、世界が変化していきます』
?『人の声、時には暑く、時には冷たく…』
?『あなた達それぞれの運命の日に…』
?『戻っていくはずです』
トコトコトコ…
男「な。何なんだ……?」
男「……さ、寒い…ぞ…」
男「……ひ、人の声……?」
?『本来なら、時は戻りません』
?『しかし、あなたたちは7人には失った記憶のある一日を
もう一度繰り返してもらうのです』
?『分かりますよね?』
?『あなたたちは今日、ここで人を殺しました。
そして…その力の偉大さ、絶大さを認識したはずです』
?『それを知った今、あなたは過去でどんな行動をしますか?』
?『同じ行動?』
?『同じ選択?』
?『選んでみて下さい。そして──』
?『何人生き残れるか…楽しみにしています』
?『では──』
男「あああ………」
男「………これは……」
男「……眩しい………眩しいぞ……」
男「……そうだ……」
男「……俺はあの日………」
男「…………休日なのに……会社にいたんだった…」
ザザザザザザザザザ
──繋がる
ザザザザザザザザザ
選ばれた人間=記憶喪失でおk?
保守ありがと
手から石油の匂いが…
メガネ「男さん、男さん…」
男「……あ……ああ……」
メガネ「男さん、男さん!!ちょっと!」
男「……な、なんだ…?」
メガネ「ちょ、ちょっと大丈夫ですか?
顔色悪いですよ……具合が悪いなら早く言っ──」
男「(こ、ここは……)」
男「お、おい…ここはどこだ?」
メガネ「は?何言ってるんですか?
そんなこと言っても残業手当は出ないですよ、多分」
男「(そうだ……そうだ俺の会社だ……)」
男「わ、悪い……で、あと何時間で締め切りだ?」
メガネ「そんなことまで忘れちゃったんですか!?
しっかりして下さいよー……あと三時間…
男さんの分担はここ…早めに終わって下さい」
男「あ、ああ」
メガネ「まあ、悪いのはアイツなんですけどね」
男「え?」
メガネ「梶原ですよ。今頃になって『担当の分が絶対に終わらな
い』とか何言ってんだって。お前が自分でやるとか言い
出したくせに…知らん顔ですよアイツ」
男「梶原……ああ、あの小ちゃい奴だな…」
メガネ「…大丈夫ですかー男さん?
男さんは今日娘さんの誕生日だったんでしょう?
連絡入れた時、凄い怒ってましたよ…」
男「そ、そうだったな」
メガネ「…………。ま、とりあえず頑張りましょう?
早めに帰ってあげれば、まだ間に合いますしね」
男「お、おう」
メガネ「じゃあ、僕も一踏ん張りしてきます。
男さんも頑張りましょう!」
男「(やはり……あの日のままだ……)」
男「(でも、どうして……娘と妻が死んだんだっけ…?
くそ、記憶が断片で曖昧すぎる!)」
男「(まずはこの仕事をなんとかしないとな…)」
──三時間後
メガネ「よっしゃー終わったああ!!!」
男「ああ……しかし寒いな…」
メガネ「暖房装置が壊れてますからねえ…」
メガネ「どんなブラックだ!と言いたいですけど…
給料はそこまで安くないですし……」
男「(と、とりあえず仕事は終えたが……
どうすればいいんだ…)」
男「(ま、まずは…)」
男「悪い。急いで帰るわ…」
メガネ「あ、そうでしたね。
この時間ならまだ起きてると思いますよ。
娘さんにハッピバースデーとお伝え下さい」
男「おう、ありがとな」
バタン
梶原「……………」
梶原「男先輩………僕は……」
梶原「………………」
梶原「……………あなたが心底羨ましい…」
──駐車場
男「……とりあえず、自宅に向かえばいいのか…?」
男「分からん…。何が起こって二人が死ぬのか…」
男「車にまずは乗ろう…」
ピピピ
ガチャ
男「よし」
男「じゃあ、行くぞ」
トゥルトゥルトゥルトゥル
ん、電話?
男「は、はい、もしもし…」
?『……………ぇ』
男「ん……すみません、聞こえない?」
?『……あなた…』
男「妻か!?」
妻『あ……なた……助けて……』
男「(そうだ、そうだそうだそうだ!!
思い出したぞ!!)」
男「ど、どうした!?何があった!?」
妻『…し、知らない人たちが……家に……』
男「聞こえづらいぞ!?もっとはっきりと…」
男「(違う違うそうじゃない……そうじゃない…)」
男「(妻は確か……娘と一緒に隠れてるんだった……)」
妻『……あなた……助けにきて……怖い……』
男「警察だ。警察に電話を」
妻『……早く助けにきて……もう気付かれるから…切る…』
男「お、おい!!」
ツー…ツー…ツー…ツー…
男「く、くそぉぉおお!!!!」
男「で、電話だ……警察にまずは電話……」
男「(警察……けいさつは…
あの時俺は……気が動転して…電話しなかったのか…)」
男「で、でも…俺が……この距離なら一番近いか…?」
男「……行くぞ」
……ドゥドゥドゥ……
男「………くそっ…邪魔だドケ!!」
男「頼む、頼むから、間に合ってくれ!」
男「ああ、こんなことなら
警察に連絡を入れとくべきだったッ!」
男「いや落ち着け…落ち着け……
あの日を思い出すんだ……この後、どうなった!?」
男「……………」
男「………そうだ、家には間に合ったんだ…」
男「く……その後がまだ、思い出せん……」
男「…と、兎に角…それだけでも分かれば……」
男「スピード上げるぞ……」
──自宅
男「……………」
男「つ、着いた…」
男「明かりが付いてる……」
男「記憶ではまだ、この時点では死んでない…」
男「見つかって…拘束されてるんだったな…」
男「……くっ…」
男「身代金目当てだったのか…?」
………カチャ
男「(扉を静かに開ける)」
男「(ここまで記憶通りだ……)」
男「(二階だ……)」
男「(凶器凶器……)」
男「(そうか……)」
男「(あの時俺は…気が動転していて…
素手で行ったんだ……)」
男「(多少、武術に心得があったから…
自分の力を過信してたんだったな…)」
男「(くそ、何か……)」
男「ん?」
男「こ、これは……錆び付いたナイフ?」
男「(ここで……あの世界とリンクするのか…)」
男「(………やってやろうじゃないか)」
男「……………」
──二階
?「おい、奥さん」
?「旦那の連絡先を教えろ」
妻「……………」
?「いいからさっさと言えやゴラア!!」
バンッ
妻「きゃあ!」
娘「お、お母さん!」
?「おい、さっさとしねえと、
娘とお前にもっと痛い目合わせるぞッ!」
?「殴る程度じゃ済まさねぇ……分かるな?」
妻「…………ッ」
妻「…………分かりました」
妻「……これが夫の電話番号です…」
?「よし、分かってんじゃねえか…」
?「おい……外に見回りにいってこい」
?「分かった」
ガチャン
──階段
男「(もう少しで…犯人の一人がやってくるはずだ…)」
男「(あの時は何とか倒したが音を立てて、
もう一人に気付かれたんだよな)」
男「(もう、同じミスはしない…)」
ガチャン
男「(来た)」
?「くそ…なんで俺が見回りなんだよ…」
?「あんな女ども犯しちゃえばいいのによ…。
馬鹿だな…糞が」
男「(……今だ!)」
?「…………ッン!!!」
男「(ナイフで首の動脈を切る…)」
ブシャ
?「………ンンンンンッ!!!!!」
バタン
男「ハハ、簡単だ」
男「…………」
男「………あと一人…」
──二階
……バタン
?「何だ……??」
?「もしかして……誰か帰ってきたのか…!」
?「…ッ」
?「おい!てめぇ誰だ!!!
返事しやがれ!」
──階段
男「…くそ、気付かれたか…」
男「これだと過去と同じになってしまう…」
男「あの時は確か…」
男「妻と娘の首にナイフが当てられてる状態で…」
男「…………」
男「結局、選択を誤って両方殺させちゃったんだっけ…」
男「………」
男「………今度はそうはさせないッ!」
──二階
?「…………」
?「き、気のせいだったのか?」
?「くそっ、何かヤバい予感がするぜ!」
?「おい、二人ともこっちにこい!」
妻・娘「キャッ!」
?「よし、それでいい」
?「おい!!はやく出てこい!!
そうしないとまずは片一方を殺してやる!!」
ガチャ
?「な?!」
男「………出てきたぞ。
早く二人を解放しろ」
妻「あ、あなた!!!」
娘「お父さん!!」
?「くそ!!!黙ってろゴラア!」
?「お前、なんだその血だらけの服は!?」
?「もしかして、お前アイツを殺したのか!!
どうなんだ!答えろ!!!」
男「……………」
妻「え??」
娘「お、お父さん……?」
男「二人とも……心配しなくていい…」
男「これは俺の血だ……アイツに刺されてな…」
妻「そんな……」
妻「…あ、なた……大丈夫なの……?」
?「じゃ、じゃあ!アイツは今どこにいるんだ!」
男「不覚にも一差しもらったが、武術には心得があってな。
苦戦したが、倒させてもらったよ」
?「くっ!貴様ーー!!!良くも!!」
男「お前が言えた義理か。
人の家に押し入って、何を企んでる?」
?「…………」
?「…………ハハ」
?「………お、おい」
?「……お前、そこで死んでみろ…
そしたらこの二人助けてやるよ…」
男「(記憶通りだな……)」
男「(これで俺は強行に出て、二人とも殺されたんだ…)」
男「(どうする?)」
男「(どうすれば二人は助かる……?)」
?「おい!黙ってねぇで、そこで死んでみろ!
ナイフ持ってんだろ!!」
男「…………ああ」
男「…………ああ」
男「それで、本当に二人は解放されるのか…?」
?「そうよ!お前はあの世だが、二人は助かる…。
お前には選択権が無いんだ、早くしろ!!」
男「(……どうすれば…)」
男「(このままだと記憶の二の舞だ…)」
男「(何か絶対に活路があるはず……)」
──『あなたたちは今日、ここで人を殺しました。
そして…その力の偉大さ、絶大さを認識したはずです』
男「(くそっ、だからなんだ!)」
男「(それだけでは……救えないじゃないか!!!)」
──『同じ行動?』
男「(……違う……違う……)」
──『同じ選択?』
男「(……………え)」
男「(選択……選択………せんたく??)」
男「……………」
?「おい!早くしろ!
二人とも死んでもいいのか!!!」
男「分かった死のう……」
?「お、おう。分かってんじゃねえか…」
妻「あなたダメ!!!」
娘「お父さん止めて!」
?「黙ってろ貴様ら!!」
バン
妻・娘「キャ!」
男「お、おい!止めてくれ!
俺なら今ここで死ぬから!!」
?「だったら早くしろ!!(コイツ馬鹿か!
お前が死んだところで助けるわけないだろ。
顔も見られてんだ、皆殺しだ)」
男「……いくぞ…」
妻・娘「……う!!」
グサッ…
男「ああ………」
?「(おっ、やったか?)」
バタン
?「へへ、もう立てる気力も無いか!
んじゃ、最後に冥土の土産に持っていけ!
助けるわけねぇだろボケが!!」
男「だろうな」
?「へ?」
ダン
ザッ
ザザッ……
?「お……あ………え?」
男「死ね、屑が」
……グググ………
?「あああ!!!………だ……が」
?「お前の、妻も……道連れだ……」
妻「……………あ………」
娘「お母さん!!」
男「そんなこと……」
男「初めから覚悟の上だあああああああああ!!!!」
?「うおおお…お………お…………ブェッ…」
バタン
男「くそっ!!!」
男「ダメか……、首もと…か…!!」
妻「…あ、あなた……」
男「ま、待ってろ!!絶対何とかしてみせるから!!」
娘「…うぅ……ひっくひっ……お母さん……」
妻「ありがと…。
あなたの選択……間違ってないわ……」
男「ち、違うんだ……待て、まだ死ぬんじゃない!」
妻「いい、いいの……あのまま、だと、
二人とも死んでたから……これが正しいの、よ…」
男「違う違う違う!!
俺は二人とも助けようと……あああああ!」
妻「…………ふふ………優しい人……
お願い………これから…罪の意識で……悩まないで……」
妻「娘も……ね?…お父さんと仲良く、やってくのよ……」
娘「うぅ……ひっく……ひっくひ……」
妻「あ、あなた……娘を……よろ、し………く…………ね…」
男「………ああ」
男「そんな……そんなあ…………」
男「ああああああああああああああああああ!!!」
ザザザザザザザザザ
──繋がる
ザザザザザザザザザ
男「……うぅ……ああ……うう…」
男「…………ここは……??」
男「そ、そうか………結局、
二人とも死なせた事実は変わらないのか…」
男「選択だっけ……?じゃあ、俺は…誤ったのか…」
男「二人とも生かせれなかったんだもんな……」
男「に、二度も妻をこの手で失うなんて……ああ」
男「うあ…あああ…!」
ピンポンパンポン♪
?『お疲れさまです』
?『さてさて、結果発表』
?『七人中、何人が生き残ったかな?』
?『二人……二人だけですか…あれま…』
男「………え?」
?『今、生きてるってことは、
選択は誤りじゃないってことですね』
?『ここからは名指しでいいか。もう少ないしね』
男「お、おれは……まだ生きてるのか……?」
?『そうですよ、男さん!
あなたは見事、正しい選択が出来たんです』
男「で、でも………妻を……」
?『あの展開で求められるのは、
二人ともを助けたいと望むことではありません。
あの状況下では、どうやって一方を助けるか』
?『それこそが、求められた選択だったんです』
男「妻を殺させてもか……」
?『では逆に……あなたの過去は、どうなりましたか?
二人を助けようと曖昧な行動をし、
両方とも死なせてしまった』
?『それが現実です。
だからこそ、さきほどのように娘さんを助けようと
まず動いたことは最良の選択』
男「…………ぅ」
?『何です?』
男「……違う」
男「……違う違う違う違う」
男「ちがーーーうッッ!!!!」
男「俺は二人とも助けようとしたんだ!!」
?『では無意識の行動だったんじゃないですか。
私が見るに、明らかに娘さんを守りに行ってますね。
まあ、結果が全てですから。あなたはクリアです』
?『もう一人の方は……。
まあ、言う事ないですね。完璧です』
男「…………くそっ」
?『ま、男さん、諦めて下さい。
過去を結局は変えられない訳ですから。
では次の説明をしたいと思います』
?『結果的に二人になってしまった訳ですが』
?『次で本当に最後です』
?『お疲れさま』
?『では、そのまま歩いて下さい』
男「………俺は……もう…ここで終わりでいい……」
男「……こんな世界で……俺は何をすれば良いって言うんだ」
男「もう…生きる価値なんて無い……」
男「初めに無関係な女を殺し……」
男「次の奴に罪があったとしても
……俺が殺していい理由は無かった…」
男「犯罪者じゃないか……俺は……」
男「これ以上……人を殺めたくない」
──妻『…………ふふ………優しい人…──
?『………………』
?『まあ、その気持ちも分からなくはありませんが、
選ぶのは全て終わってからにしたらどうです?』
男「………何があろうと俺は……」
?『………………』
?『一人の男がいました』
?『彼は体が小さく、顔も醜い部類だった。
要領も悪く、常に馬鹿にされてきた』
男「…………何の話だ…」
?『しかし、何とか頑張って、ある会社に入ったんです。
そこで必死に頑張ろう。そう思い、その男は
自分で強く仕事を要求するようになる』
?『でも、現実はうまくいかない』
?『そんな矢先、自分と真逆な人間に出会うんです。
顔は普通ぐらいのに、綺麗な妻がいて娘がいて…
自分より位も上で……全てが劣る相手』
男「………な。何の話だ?」
?『羨ましかったそうです。本当に羨ましかったそうです。
そしてそれが…
憎しみに変わるのも、そう時間がかからなかった』
男「……………」
ドクン
?『男は裏社会に手を伸ばします。
そこで二人のギャングに出会い、
自分が今まで溜めてきた金を資金に、あることを頼みます』
ドクンドクン
男「(な、なんだ……この胸の鼓動は……何だ?)」
?『羨ましかった。そして、何より憎かった。
だからこそ、その存在が許せなかった』
?『そして…そのギャングに妻と娘を人質に、
身代金を奪うことを計画させます』
俺「…………ああ」
ドクンドクンドクン
ドクンドクンドクン
?『意図的に、会社の仕事を残し、
休日に相手を出勤させる。
計画は順調に運びました』
?『ギャングの一人の殺人衝動は、予測出来ずに』
俺「…………あああ」
ドクンドクンドクン
?『二人を殺させるつもりはありませんでした…。
お金を取って…少し痛い目を見ればいいと、
思っていただけなんです。と、彼は語ります』
ドクンドクンドクンドクン
?『でも、結果、相手の家族は死に。
予想外の展開が待っていました』
?『もう、お分かりですね』
ガガガガガガガガ……
道の先の……扉が……上がる……
?『あなたたちの本当の憎悪を──』
?『最終試験』
?『どうぞ、好きにして下さい』
?『いたぶるも殺すも、あなたたち次第』
?『さあ、始まりです』
男「……………」
男「か、………」
男「かじわらあああああああああああああッ!!!!!」
梶原「ひっ…」
梶原「ごめんなさいごめんさいごめんなさいごめんさい」
タ、タ、タ、タ、タ
男「お前か……お前が、俺の人生を狂わせたんだな……」
梶原「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
タ、タ、タ、タ、タ
男「貴様が……あいつらを使って…
…俺の愛する人を殺させたんだな」
梶原「殺させるつもりは……無かったんです!!
信じて下さい!」
男「だまれええええ!!!!」
梶原「ひっ!」
男「お前がお前がお前が!!!妻と娘を殺したんだああ!!!」
バン
梶原「うぅ……わああああ」
男「……動けないのか」
梶原「………すみませんすみませんすみません」
男「謝って許されると思うなよ……」
男「痛み付けてやる……苦しめて苦しめて!!!
そう簡単には死なせてやらないからなァ!!」
梶原「……あ………あああ」
男「……………」
男「……凶器はどこだ…?」
男「………このナイフしか無いのか?」
男「いいだろ……だったら…これで」
男「……切り刻んでやるッ!」
梶原「……あ、あああ、ああああああああ」
男「………なんだ、もう壊れたのか…」
男「まだ…初めて無いのに…
もう精神が壊れたと言うのか……」
梶原「あへ……あ、だすけ、…えへへ…」
男「くそぉぉぉぉっ!」
男「これじゃ、なんの復讐にもならないじゃないか!」
──妻『…………ふふ………優しい人…──
男「………ああ」
男「…そうか……」
男「俺は……何をしようとしてたんだ…」
男「………こいつを殺したところで…
妻と娘は帰ってこないのか…」
男「あは…」
男「あははは」
男「………………うぅ……!!」
男「……もう……だめだ……」
男「……うぅ……あああ……ああああああ!」
ピンポンパンポン♪
?『はい、終了』
?『お二人とも合格ですよ』
?『たった二人ですが、本当に素晴らしい』
男「……………」
男「…………え?どうして?」
?『いいですか』
?『私は、ただの殺人鬼を作りたいわけじゃない』
?『そんな人間は…反吐が出るほど醜い』
男「な、何を言ってるんだ……」
?『美しくないんですよ!
自分の欲望のみで他人を殺し、
思慮分別も出来なくなった…そんな人間は美しくない』
?『本当の美しさとは…
『殺したいが殺せない』…『殺せるが殺さない』…
その葛藤にこそ生まれるものなのです』
?『その境界線を隔てるのは…状況と罪の重さ。
殺さなければいけない場合と、
殺さなくてもいい場合』
?『つまり…私情のみで復讐をするような人間は…
私の思うところでは無いのです』
?『おめでとう』
?『最終試験を見事クリアし、
あなたたちは現代の“アサシン”となるわけです』
男「………なにが…暗殺者だ……」
男「あまりにも幼稚で……狂っているッ…」
?『…………』
?『何とでもおっしゃって下さい。
まあ、とりあえず──』
?『手始めに、そいつ“ら”は殺しときますよ』
男「………え?」
ガチャン
男「な?」
大男「久しぶりだな。
よくここまで生き残ったよお前」
男「………なんだ、その鉈は…」
大男「これか?
ま、俺みたいな出来損ないは
そこで頭が逝っちゃってる奴の処理だわな」
男「………梶原を殺すのか…?」
大男「そういうこと」
男「……おい!」
男「これは、お前の言う醜い行動なんじゃないのか!」
?『…………』
?『そうですが、私は既に美しい人間などではないわけです。
ここに私情で人間を集わせ、殺させ、
そして生き残ったのは二人だけ』
?『そいつも殺します。
あなたちにとっては苦しいかもしれませんが、
耐えてくれると助かりますよ』
?『仕上がりをするのです。
世界で、唯一、殺してやりたいほど憎んでる相手。
それをあなたたちではなく、私が殺してやる』
?『そうすることで、全てが完成する訳です』
?『おっ…隣の部屋ではもう終わりましたよ』
?『男さん、あとはあなたの仕上がりだけです』
男「…………」
男「……………お前らは狂ってる…」
男「いや、…既に俺も気が狂ってるわな」
大男「…………おい」
男「だがな、力の無い梶原を裁くのは、
俺でもない……お前らでもない。
『法』でいいんだよ」
大男「いいから、どけ」
男「こんな無力な奴を殺す意味など無いじゃないか…。
それこそ理に叶っていない」
大男「どかないと殺すぞ」
?『まあ、待って下さい』
?『そうは言いますが、この状態になってしまった以上、
目撃者である彼は、死んでもらうしか無い訳でして…』
男「馬鹿野郎」
男「そんなの、俺の知ったことじゃねぇ」
?『………あれま…』
?『…これは……失敗だったかな?』
?『変な正義感が生まれてますね…ダメだ…失敗だな…』
?『よし、そいつも殺していいですよ』
大男「ハハ、滑稽だ」
大男「そういうことなんで、俺と同じ失敗君。
死んでもらうことに急遽決まりました」
ビュン
男「…ッ」
大男「………一発で死ねよ。
俺はお前と違って鍛えられてんだ。
下手に逃げてイタい目見るだけだぞ?」
男「………」
男「やってみないと分かんないぞ」
大男「馬鹿だな本当お前。
漫画とかの見過ぎじゃねえの?
とりあえず、お前は後回し」
大男「よっと──」
男「……え?」
ヒュイヒュイヒュイ………グサッ
梶原「……うう……グェ…ビチャ」
男「………な…」
大男「ビンゴ!
一瞬だったな、で、次お前」
男「……(くそっ、なんて俺は無力なんだ!)」
大男「んじゃ、凶器もないんで…
撲殺で」
男「……………」
男「………く、行くぞ!」
男「おりゃあああ……ああ!」
大男「…………」
大男「………ほんと、アホ…」
大男「……勝てるわけないだろお前」
男「…諦めない!」
大男「俺が初めに言った事覚えてるか──」
──うるさい野郎には
再度寝てもらいます…だよ!!
バンッ
……ピンポンパンポン♪
?『ん、結局、一人だけになっちゃいましたね』
?『まあ、いいです』
?『これからこれから。
世界の悪を根絶していきましょう』
?『そして──』
?『権力者が怯える世界を』
?『ははっ』
──隔離地域 ゴミ捨て場
男「……………」
男「……………う…」
男「………うぉ……ああ…」
男「………な、なんだ?……生きてる…?」
男「……ぅ…あちこちが……痛い……」
男「…そうだ……」
男「あの大男に一瞬でのされて……」
男「あ…れ…?」
男「何で……俺……殺されたんじゃ………ないの?」
──???
?『……………』
?『まあ……男さん……』
?『あなたは少し……予想外に行動したわけで……』
?『殺すのはおしいかと思ったんですよね…』
?『まあ、私から最早あなたにすることも無いですし…』
?『今後どうなってくれるか……期待ですよ…』
?『……………』
?『ふふ』
?『まずは彼女を鍛えないとね──』
──隔離地域 ゴミ捨て場
男「………」
男「………生きてるのか…」
男「………ま、まずは傷を治さないとな…」
男「……運が良かったのか…それとも悪かったのか…」
男「……まずは…」
男「家のベットで横になりたいな──」
?「あ………!」
?「…だい……う………か?!」
男「………(なんだ声が聞こえる……?)」
男「……(まあ、いいか……もう……げん…か…い)」
……………。
……………。
数年後。
ある街に『アサシン』と名乗る、一人の殺人者が現れる。
それによって──
この国は、揺れることになった。
──英雄などではない、ただの殺人者
しかし殺される人間は何らしかの罪を負った者。
権力を持つ故、その罪が裁かれない者。
資本社会と司法の行き詰まりを、
強く揺さぶるような、そんな存在が生まれたのだ。
ただ、それはまた別のお話。
──ピンポンパンポン♪
~Fin~
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