ラヴィプ- LOVE VIP-

【翌日・午前４時】

兄「本当に大丈夫か？」

妹「うん。心配かけてごめんね？今日も頑張って」

兄「…仕事、休めなくてごめんな」

妹「平気だよー。ちょっと気持ち悪かっただけだし」

兄「…本当なら、傍についてやりたいんだけど」

妹「えへへ、だってお仕事休んだらお兄ちゃんのごはんもなくなっちゃうじゃない」

兄「もし調子悪くなったら、すぐお隣さんに言うんだぞ？」

妹「うん。ありがとー」

兄「…ごめんな、妹」

妹「謝らないで？そのかわり…」

兄「なんだ？」

妹「…早く帰って来てね。どこも行かないでね」

兄「うん。すぐに帰ってくるよ。じゃあ」

妹「えへへ…行ってらっしゃい」フリフリ

ガチャ

バタン

【午後１２時２０分】

兄「やっと昼休みか…」

先輩「おう○○、お疲れさん」

兄「先輩…お疲れ様です」

先輩「なんだよ、○○。今日も昼飯抜きか？」

兄「はは、まぁ…」

先輩「飯食わないでよくこんなハードな仕事できるな。尊敬するよ…こんな若いのに」

兄「尊敬されるような事じゃないですよ、こんなの」

先輩「いや、すげえ事だよ。どら、たまには飯でも奢ってやりか」

兄「え…！」

先輩「ラーメンでも食いに行くか！」

兄「あ、あの…先輩」

先輩「ん？なんか他に食いたいもんあるのか？じゃあ牛丼でも行くか？」

兄「…すみません」

先輩「良いさ、こんぐらい。○○も頑張ってるしな」

【牛丼屋】

先輩「すんません、牛丼特盛を２つ」

兄「先輩、お願いがあるんですけど」

先輩「またか？なんでも言ってみろ」

兄「…俺の分、持ち帰りでも良いですか？」

先輩「は？なんでだよ」

兄「……」

先輩「言いたくないのか？」

兄「いや、そういう訳じゃ…」

兄「妹が、腹空かせて待ってるんです…。最近、妹体調悪くて…」

先輩「なんだ、早く言えよ。すんません、追加で持ち帰り特盛」

兄「！」

先輩「お前も食わないと身体持たないだろ。遠慮すんな」

兄「すいません…」

先輩「お互いこんな仕事してる身だからな。毎日って訳にも行かないけど」

店員「お待たせしました。特盛二つとお持ち帰り用です」

兄「…先輩、いただきます」

先輩「おう。たまには良いさ、しっかり食え」

兄「…ありがとうございます…！」

ぱく…

先輩「美味いか？」

兄（……味がしない）

兄「…はい…うまい…です。ありがとうございます…！」

先輩「はは、泣くほど美味いか。牛丼でそれだけ喜んでくれたら奢り甲斐があるよ」

兄「う…！」

先輩「おいおい、そんな慌てんな。むせてるじゃねぇか」

兄「す、すんません…なんか…」

先輩「あ？どうした？」

兄「なんか腹が…痛くて…」

先輩「腹が痛い？無理すんな、残していいぞ」

兄「…すみません、ちょっとトイレ…！」

先輩「おう」

ジャァァァ…

兄「はぁ……はぁ…」

ガチャ

すたすた

兄「……ふぅ。すみません先輩、せっかく奢ってもらったのに」

先輩「はは、慌てて食べるからだ。気にすんな」

兄「はい…」

先輩「体調悪いなら早引きするか？俺が言っといてやるぞ」

兄「いや…帰る訳には行かないんで」

先輩「そうか。まぁ……無理すんなとも言えない状況だもんな、俺達も」

【午後４時】

兄「…ふぅ……ふぅ……」ふらふら

先輩「おい、大丈夫か？もうすぐ上がりだ、頑張れ」

兄「ふぅ……ふぅ……」

先輩「○○。どこ見て作業してんだ。しっかりしろ」

兄「…あれ？」ごしごし

先輩「おい、見えてるか？」

兄「…見えてます。見えてますよ」

先輩「嘘つけ。今日はもういいから、上がれよ」

兄「見えてますから…！やらせて下さい…」

先輩「見えてるったって…」

兄「お願いします…言わないで下さい…」

先輩「バカ野郎。お前がそんな状態で、もし大怪我したり…最悪死んだらどうすんだ」

先輩「…大丈夫です。やらせて下さい！」

お詫び申し上げます。
先輩×
兄○


やっぱり携帯で書くもんじゃないな

先輩「…今日は良いから、休んでろ。どうせあと３０分で上がりだ」

兄「でも…やります」

先輩「休めっつってんだろうが！！」

兄「…！」

先輩「もうほとんど終わってるし、俺一人でも間に合うから」

兄「…すみません…」

【午後４時半】

先輩「おい、○○。終わったぞ」

兄「え…？」

先輩「仕事終わったぞって。ほらー早く上がろうぜ」

兄「あ、すいません…」

先輩「牛丼持って帰ってやるんだろ？早く着替えに行こう」

兄「はい…。先輩…」

先輩「あ？」

兄「本当にすみません…俺のせいで迷惑かけちゃって……」

先輩「良いって。１５でこんな仕事ついてるんだ、色々苦労あるんだろうしな」

兄「…牛丼、傷んでないかな」

先輩「大丈夫だろ。早く帰ってやれ」

兄「はい。ありがとうございます…」

先輩「今日も歩きか？」

兄「はい……」

先輩「そうか…。今日は原付きだから送ってやれないんだ、悪いな」

兄「いえ、これ以上迷惑は……先輩、本当にありがとうございました」

先輩「おう、じゃあなー。お疲れさん」

兄「…」ペコ

兄「……」ふらふら


兄「腹空かせてるだろうな…」

兄「体調大丈夫かな…。もし悪くなったらお隣にちゃんと行ったかな…」

兄「へへ、牛丼…喜ぶだろうな」

兄「早く帰ろう…」

ふら…ふら…

ガチャ

兄「ただいま。帰ったぞー」

すたすた

兄「妹、体調大丈夫か？」

すたすた

兄「おーい、妹？どこだ？」

すたすた

兄「妹ー？ただいまー」

妹「すぅ……すぅ…」

兄「お、こんな所に居た…。おい、帰ったぞー」

妹「…すぅ……」

兄「…なんでこんな所で寝てるんだよ？」

妹「………」

兄「…痩せたなぁ。昔はちょっとふっくらしてたのにな」

兄「……湿疹だらけだ」

妹「………すぅ」

兄「なぁ、妹。起きろよ」

ゆさゆさ

妹「………お帰り」

兄「おう、ただいま」

妹「今日もありがとう。お疲れ様」ニコ

兄「？」

兄「おい、どこ見て言ってんだ…？」

妹「え？あ、ごめん…寝ぼけてた」

兄「…そうか。ほら、お土産あるんだ」

妹「…お土産？…食べ物？ダメだよ…？」

兄「え…？」

妹「もう悪い人にならないって、約束したでしょー…？」

兄「大丈夫だよ、先輩が奢ってくれたんだ。お前にって」

妹「え…そうなの…」

兄「ああ。だから、食べなさい。お前のだ」

妹「…」

兄「な？お前のなんだよ。だから…」

妹「…べて」

兄「うん？」

妹「お兄ちゃん食べて…」

妹「私、お腹減ってないから…お兄ちゃん、疲れたでしょ？」

兄「…俺は昼に食べたから。妹が食べな」

妹「……」

兄「な？食べなさい。食べたくないか？」

妹「……食べたいよぅ…」

兄「よし、食べさせてやるから。起きて」

妹「ん…」

兄「！」

妹「お兄ちゃん？どうかした…？」

兄「お前…足、どうしたんだよ」

妹「へ？…これ、こないだ転んじゃったやつ」

兄「転んじゃった…？ちゃんと冷やしたじゃないか」

妹「えへへ…」

兄「なんで、こんなに酷くなってるんだよ…右足真っ青じゃないか」